【陸海を制する】スズキ 創立100周年記念イベント 小さな乗り物に詰まった魅力

公開 : 2021.08.07 06:05

昨年、創立100周年を迎えたスズキ。英国で開催された記念イベントには、さまざまな名車が集まりました。

軽自動車からボートまで

text:Colin Goodwin(コリン・グッドウィン)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

1920年に鈴木道雄が浜松市に設立した鈴木式織機株式会社(現スズキ株式会社)は、今や世界的な自動車、二輪車、船外機メーカーとなっている。

遅ればせながら英国で開催された創立100周年記念イベントに、英AUTOCAR編集部の記者が招待された。3日間にわたる取材の様子をお伝えする。

英国で開催されたスズキ100周年記念イベントの一幕
英国で開催されたスズキ100周年記念イベントの一幕    AUTOCAR

SC100ウィズキッドに乗る

記者の学生時代の友人は、家族でホンダのオートバイ販売店を経営していたので、週末に彼の家に遊びに行くと、整備中のオフロードバイクやホンダのカブなんかが置いてあって、いつも楽しい気分になったものだ。しかし、記者が一番覚えているのはクルマのことだ。

彼の父親はBMWのバットモービル(当時はほぼ新車)、母親はスズキのSC100ウィズキッド(セルボの海外版)を持っていた。当然のことながら、印象に残っているのはBMWだ。もしスズキに乗せてもらったことがあったとしても、忘れてしまっている。

スズキSC100ウィズキッド
スズキSC100ウィズキッド    AUTOCAR

スズキが創立100周年記念イベントに持ち込んだヴィンテージ車両の中に、1982年のSC100 GXがある。このクルマは、47psの970cc 4気筒エンジンを後部に搭載し、4速トランスミッションで駆動する。このエンジンは、スズキがフロントバンパーの後ろにバラストを追加したほど、重量が後部に偏っていた。

カーディフから北の丘陵地帯に向かって、ウィズキッドに加えて、新車のイグニスとスイフト・スポーツを走らせていく。スイフト・スポーツは「ウォームハッチ」だが、ターボを搭載していない先代モデルのような魅力や運転の楽しさはない。とはいえ、400psというオーバーパワーなメルセデスA 45よりは所有したいと思っている。

イグニスは記者お気に入りのクルマの1つだ。少し残念なことに、2WDモデルが895kgであるのに対し、4輪駆動モデルは940kgもある。とはいえ、現代の衝突規制に適合した4ドア車としては驚異的な数値だ。ロータスが最後のエリーゼをどうして1トン近くにしたのか、わたしには理解できない。

スズキは、マツダと並ぶダイエットに理解のある数少ない自動車メーカーだ。

軽やかで幸せなドライブ

愚かなことに、車列を組んで山に向かう前に、カメラマンの若いリュック・レイシーに古いクルマの性能の限界について説明するのを忘れてしまった。

彼自身はスイフト・スポーツに乗っているので問題はないが、わたしの乗るSC100の最高速度は追い風が吹いているときでも140km/hしか出ない。避けたいのは横風だ。後部に重量が偏っているため、激しい風の中では直進安定性が恐ろしく低下すると思われるからだ。

スズキ・スイフトとSC100ウィズキッド
スズキ・スイフトとSC100ウィズキッド    AUTOCAR

ウィズキッドを所有していた友人は、ポルシェ911を運転しているようだが、パフォーマンスがないと表現していた。実際、わたしはスコダ・ラピッドを思い出した。軽やかで少し気弱なフロントエンドと、前輪で起こっていることをすべて感じられる軽快なステアリング。丘陵地帯や田舎道では、SC100はとても楽しい。

この小ささだからこそ、他のドライバーの約2倍の距離を走ることができ、控えめな馬力だからこそ、常に先を読んでペースを保つことができるのだ。ブレーキは決して素晴らしいものではないが、床まで踏むほどではない。足回りはダブルウィッシュボーンとコイルスプリングで固められ、ハンドリングは整然としている。

スズキがこのイベントにカプチーノを持ってこなかったのは残念だ。SC100と同様に、いつも立派なクルマを作っているスズキが、本当に刺激的なクルマを求めて作った傑作だ。フロッグアイ(オースチン・ヒーレー)を現代風にアレンジしたようなカプチーノは、SC100よりも希少な存在だった。わたしはカプチーノで何度も何度も幸せな旅をした。

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