【シリーズ3を解き放つ】EタイプUK アンリーシュドへ試乗 V12は6.1Lへ 前編

公開 : 2021.10.19 08:25  更新 : 2021.10.20 08:17

21世紀に合わせてレストモッドされた、ジャガーEタイプ・シリーズ3。本来の魅力を一層輝かせたアンリーシュドを、英国編集部が評価しました。

1台に述べ4000時間の作業工程

執筆:Matt Prior(マット・プライヤー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
クラシックカーへ施される新しいスタイルが、レストモッド。オリジナルを尊重してレストアしつつ、現代的な内容へモディファイする手法だ。

今回試乗したアンリーシュドの場合、モディファイより、レストアの方へ重点が置かれている。ジャガーEタイプ・シリーズ3のロードスターに手を加え能力を高めながら、完璧といえるレストアが施してある。

EタイプUK アンリーシュド(英国仕様)
EタイプUK アンリーシュド(英国仕様)

アンリーシュドを製作したのは、英国西部のケント州に拠点を構える、EタイプUK社。わかりやすい社名だが、その名の通りジャガーのレストアと販売を手掛けるスペシャリストだ。

整然とした建物がいくつか並ぶ中で、EタイプUKは多数のクルマを保管し、レストアし、販売している。完璧なレストア作業には、少なくとも16万ポンド(2432万円)は見て欲しいと、同社の担当者は話す。

現存するEタイプ・シリーズ3の中で、アンリーシュドとして仕上げられるのは10台のみ。述べ4000時間という作業工程を経て、素晴らしいロードスターが路上へと解き放たれる。

EタイプUK社が、アンリーシュドの製作に要求する金額は39万ポンド(5928万円)。別途、ベースとなるドナーカーも準備しなければならない。つまり、最終的には総額50万ポンド(7600万円)ほどの予算が必要になる。

製作される10台のうち、執筆時点でまだ3台に空きがあるという。契約済みの7台のうち、6台は英国の外へ運ばれるそうだ。

シリーズ3の見た目を美しく仕立て直す

1971年から1974年に作られたオリジナルのシリーズ3は、ジャガーEタイプを締めくくった存在だった。大排気量と多気筒を好むアメリカ市場に向けてV型12気筒エンジンが搭載されたが、Eタイプでは最も人気の低いシリーズでもある。

北米の規定に合わせた大きなバンパーと、フロントグリルを取り囲むクロームリングが追加され、クーペはすべてキャビンが大きく膨らんだ2+2仕様だった。筆者の目にも、シリーズ3のルックスは均整が取れていないように映る。

EタイプUK アンリーシュド(英国仕様)
EタイプUK アンリーシュド(英国仕様)

それがアンリーシュドのベースとして、シリーズ3のロードスターが選ばれる理由なのだろう。リムーバブル・ハードトップを載せれば、シリーズ2までのような優雅なプロポーションを取り戻せる。バンパーとグリルバーは取り外せば良い。

ボディパネルは相当な作業時間を費やし、形状を整え収まりが調整されているはず。すべてのパネルがピタリとフィットし、塗装の仕上がりも素晴らしい。シリーズ3の姿は、再び浮かび上がるように軽快なものになっている。

ボンネットには冷却用のルーバーが多く切ってある。メカニズムのアップグレード上、必要なものなのだろう。

ホイールは、オリジナルより1サイズ大きい16インチだが、クラシカルなワイヤータイプ。デビッド・ブラウン・スピードバックGTのように、大径でないのがうれしい。

ボディ加工は、車内の頭上空間を確保するため、クロスメンバーを下げることにまで及ぶ。サイドシルは強化され、シャシー剛性を高めていいる。剛性は、クルマを速く走らせる上で重要な要素だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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