イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ 試作車へ試乗 4モーターで1114ps

公開 : 2021.11.12 08:25

復活したイスパノ・スイザから、純EVスーパーカーが誕生。怒涛の馬力だけでなく、価格にも驚かされます。英国編集部の評価です。

165万ユーロ(2億5575万円)で5台限定

執筆:Mike Duff(マイク・ダフ)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
これまでにも、歴史あるブランドのいくつかは復活を遂げてきた。だがイスパノ・スイザほど、長い休眠期間にあったブランドも珍しいだろう。

イスパノ・スイザは、1904年にスペインで創業した自動車メーカーだ。これまでに約1万2000台のクルマを生み出したが、1946年に生産を終了。航空機用エンジンなどを手掛けていたものの、最終的にブランド名は途絶えていた。

イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ
イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ

しかし、最高出力1000馬力以上を誇る、純EVのスーパーカー・メーカーとして見事に復活を成し遂げたようだ。異次元と呼べる価格にも驚かされるが。

このカルメンは、バルセロナを拠点とするQEVテクノロジー社によって開発されている。その社長、ミゲル・スケ・マテウ氏は、イスパノ・スイザを共同で創業した1人、ダミアン・マテウ氏の孫に当たるという。ブランドとのつながりも、ちゃんとある。

最高出力1019psの通常のカルメンは、19台が製造される計画。その欧州価格、税別で150万ユーロ(1億9800万円)なり。さらに1114psの高性能なカルメン・ブローニュは、5台が作られる。こちらは、税別で165万ユーロ(2億5575万円)だという。

カルメンは、車体の殆どがカーボンファイバー製。ボディパネルのほか、車体中心のモノコック構造と、前後に取り付けられるサブフレームも。サスペンションは、前後ともダブルウイッシュボーン式。アーム類には、航空機グレードのアルミ材が用いられている。

クワッドモーターで車重は1690kg

ハイパワーな純EVとしては珍しく、カルメンは後輪駆動。駆動用として、4基の軽量な永久磁石AC同期モーターが搭載されている。

2基づつ、シングルスピードのリダクションギアを介して、左右のリアタイヤを動かす。機械的には別れているが、バーチャル・ディファレンシャルとイスパノ・スイザが呼ぶトラクション・マネージメントを備え、トルクベクタリング機能は有する。

イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ
イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ

エネルギー源は、シートの間と後ろにT字型で搭載された、リチウムイオン・バッテリー。合計700セルで構成され、実容量は80kWhで、動作電圧は700Vだという。高い最高出力を発揮するべく、高い放電率が得られるように設計されている。

急速充電能力は、DCで最大80kWまで。最短30分で、残量30%から80%まで充電可能となっている。

航続距離は、WLTP値換算のテストで402km。バッテリーの重量は800kgもあるが、軽量な素材をふんだんに用いたことで、車重は1690kgに抑えられている。この性能の純EVとしては、驚くほど軽い。

今回は高性能な方のカルメン・ブローニュの、プロトタイプに試乗させていただいた。実写を目の当たりにすると、写真よりデザインはダイナミック。実際の方が低く見え、いかにも速そうだ。

スタイリングは、1938年のイスパノ・スイザ・レーサー、H6Cデュボネ・キセニアにインスピレーションを受けたとのこと。レトロに仕上げたというより、雰囲気を巧みに展開しており、大きく膨らんだリア周りは斜めから見ると特に共通性を感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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