イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ 試作車へ試乗 4モーターで1114ps

公開 : 2021.11.12 08:25

よりサーキットフォーカスなブローニュ

最近の純EVでは、フロントグリルの処理が課題の1つ。カルメンにも従来のクルマのように大きなグリルが口を開けているが、こちらはしっかり機能する。駆動用モーターとバッテリーを冷却するため、ラジエーターがその奥にある。

ちなみに通常のカルメンには、デュボネ・キセニアにも備わっていた、リアタイヤのフェアリングをオプションとして装備できる。空気抵抗を低減するために。だが、カルメン・ブローニュでは装着できないという。

イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ
イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ

電動のバタフライドアを開いて、車内へ乗り込む。開口部は限定的で、少々アクロバティックな体勢を取る必要があるものの、一度座ってしまえば運転席まわりは程々に広い。

試乗車のインテリアには、ブロンズカラーが随所に用いられていた。配色は好みが分かれるかもしれないが、内装の仕立てはプロトタイプながら高水準だ。

特徴的に感じたのは、センターコンソールのスイッチ。ドライブとニュートラル、リバースのギア・セレクターが三角形に並んでいる。

イスパノ・スイザは、カルメンをラグジュアリーなグランドツアラーだと表現している。だが、こちらのカルメン・ブローニュは、よりサーキットフォーカスな仕様。実際、試乗場所もスペインのカタルーニャ・サーキットに限定されていた。

コース上では短時間ながら、カルメン・ブローニュの圧倒的な加速力を実体験できた。走行を先導したテスラによって、ラップタイムを狙うことは許されなかったけれど。

加速Gは甚大でもノイズはほぼ皆無

スタート時は、エコ・モードで。加速力は制限されるものの車内は極めて静かで、高速道路の速度域なら、外界との隔離性は高い様子。ノーマル、スポーツと切り替えていく毎に、より多くのパワーが引き出せるようになる。

試乗中、1度だけメインストレートで全開走行できる機会があった。加速Gは甚大だが、エンジンが放つような咆哮は一切聞こえてこない。その組み合わせには、ロータスエヴァイヤのプロトタイプと同様に、当惑してしまう。

イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ
イスパノ・スイザ・カルメン・ブローニュ・プロトタイプ

前後の重量配分は、40:60でリア寄り。タイトコーナーでは、フロントタイヤへ荷重を載せながら、エイペックスに寄せていく必要があった。早めのアクセルオンでは、アンダーステアも出てしまう。

だが、パワー調整でアンダーステアはなだめることが可能。荷重移動によって、コーナリング時の姿勢を容易に調整できることも実感できた。サスペンションなどの設計は比較的保守的な内容だが、そのおかげで走行時の安定性は高い。

後輪駆動の1114psにも関わらず、トラクションも息を呑むほど。旋回中は左右のリアタイヤ間でトルク調整が行われ、相当に攻め立てていっても、手に負えなくなるような自体には陥りにくいようだった。

完成車両にはステアリングホイールにパドルが付き、回生ブレーキの強さを調整できるという。だがプロトタイプには未装着。それでも、制動力の制御は巧みだと感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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