アウディRS eトロンGT/アウディeトロンGTクワトロ比較試乗 選ぶなら?

公開 : 2021.11.11 18:05  更新 : 2021.11.11 20:35

アウディRS eトロンGT/アウディeトロンGTクワトロに試乗し、それぞれの良さ、どちらを選ぶかを考えます。

乗る人の心に強く作用するクルマ

「EVは乗る人の心に強く作用するクルマかもしれない……」

アウディの新しい電気自動車、eトロンGTクワトロとRS eトロンGTに試乗しながら、わたしはそんなことを考えていた。

アウディeトロンGTクワトロ(前)/RS eトロンGT(後)
アウディeトロンGTクワトロ(前)/RS eトロンGT(後)

EVに限らず、最近の自動車は軒並み静粛性が高くなっていて、1000万円を越えるプレミアムサルーンともなれば、高速巡航中はエンジンノイズをまったく感じさせないモデルも少なくない。

それはエンジンが発するバイブレーションについても同じこと。つまり、静かで滑らかな走りは別にEVだけの特権ではない、といえるだろう。

ただし、そういったコンベンショナルなクルマからeトロンGTやRS eトロンGTに乗り換えると、やはりそこに歴然とした差があることに気づいて驚かされる。

それは「まるで無音のように感じられる静粛性」と「本当に無音な世界」との、決定的な違いといっていいような気がする。

もちろん、eトロンGTやRS eトロンGTにしても完璧な無音ではないものの、通常のエンジン車から乗り換えると、その静けさや滑らかさはまるで別世界。

どんなに静かなクルマでも、アイドリングストップが利いた瞬間に「あ、いままでエンジンが回っていたんだ」と気づかされるのと同じように、eトロンGTやRS eトロンGTにはエンジン車と別格の静粛性が存在する。

そして、「あたかもアイドリングストップが利いたのと同じ世界」がずっと続いているような心地よさを味わっていられるのだ。

いざとなれば驚くべき性能

この静けさ、無粋なバイブレーションが排除された世界に身を置いていると、なんだか自分の心が浄化されたような気持ちになる。

ちょっと大げさにいえば、精神的なステージが一段階、上がったように思えてくるのだ。

「静けさ、無粋なバイブレーションが排除された世界に身を置いていると、なんだか自分の心が浄化されたような気持ちになる」と筆者(大谷達也)
「静けさ、無粋なバイブレーションが排除された世界に身を置いていると、なんだか自分の心が浄化されたような気持ちになる」と筆者(大谷達也)

たとえば、背筋がぴっと伸びる。心が穏やかになって、マナーのいい運転を積極的にしたくなる。そしてクルマを自然とよりていねいに操作するようになる。

つまり、ゆったりと構えて品のいい紳士もしくは淑女になったような心持ちでステアリングを握っていられるのである。

だからといって運転に対する積極性であるとか、高揚感や期待感が損なわれてしまうわけではない。

その最大の理由は、eトロンGTもしくはRS eトロンGTが、いざとなれば驚くべき動力性能やコーナリング性能を発揮できることを、ドライバー自身が深く自覚しているからに他ならない。

そうしたパフォーマンスの高さが、ある種の官能性となってドライバーを穏やかに刺激し続けてくれるのだ。

だからハイウェイを坦々とクルージングしているだけでも、2台のeトロンGTは心地いい高揚感を味わせてくれる。

これもまた、アウディの新しいEVが備えた特徴の1つといっていいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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