ヴォグゾールMタイプとサンビーム14/40 100年前のファミリーサルーン 前編

公開 : 2022.01.02 13:45

1920年代の社会情勢に合わせて登場した、2台のサルーン。100年前の貴重なモデルを、英国編集部がご紹介します。

1RAC馬力あたり1ポンドという税制に対抗

第一次世界大戦の傷跡が残る1919年、英国の自動車産業には活気があった。事業拡大か軍事車両の生産で生き延びた自動車メーカーは、戦後の好景気に期待を膨らませた。

しかし1920年代に入ると、英国経済は急減速。自動車市場は、50%という今では考えられない大規模な縮小に陥った。特に大きな影響を受けたのが、ヴォグゾールやサンビームといった、上級自動車メーカーだった。

ブラウンのヴォグゾール14HP Mタイプと、ブラックのサンビーム・フォーティーン(14/40)
ブラウンのヴォグゾール14HP Mタイプと、ブラックのサンビーム・フォーティーン(14/40)

1RAC馬力あたり1ポンドという、自動車に掛けられた新しい税制がここに拍車をかけた。RAC馬力とは、シリンダーの直径と気筒数から計算した英国の税率基準。16hpから24hpに該当する少し大きいエンジンを持つ大衆車にとっては、厳しい逆風といえた。

そこでヴォグゾールとサンビームは、新モデルの投入で局面を乗り越えようとした。今回ご紹介する2台が、それだ。

ロンドンの北、ルートンという小さな町に工場を構えていたヴォグゾールが発売したのが、14HP Mタイプ(モデルM)。バーミンガム郊外のウルヴァーハンプトンに工場を構えていたサンビームは、フォーティーンを僅かに改良した14/40で後を追った。

登場は1921年と1922年で、Mタイプの方が1年早い。どちらにも、大きく減った売り上げを回復させたいという、強い期待がかかっていた。

ヴォグゾールMタイプは、1913年登場のDタイプや1918年のEタイプより安価な、650ポンドのエントリーモデルとして設定。設計はCEキング氏というエンジニアで、コストダウンが意識されていたことは間違いないが、新技術も取り入れられている。

丁寧な手仕事による上級モデルの縮小版

エンジンは、クランクを3本のベアリングで支える4気筒サイドバルブ。メンテナンスしやすい独立したシリンダーヘッドを、ブランドとしては初採用している。トランスミッションとクラッチをエンジンに一体化させていた点も特徴だ。

シリンダーヘッドやクランクケースとトランスミッション、トルクチューブ、リアアスクルが鋳造アルミ製という点も、ヴォグゾールとしては新しい。4シーターのツーリングボディを載せた状態で車重は1100kgと、軽く機敏に仕上がった。

ヴォグゾール14hp Mタイプ(モデルM/1921〜1927年/英国仕様)
ヴォグゾール14hp Mタイプ(モデルM/1921〜1927年/英国仕様)

価格を重視したこともあり、トランスミッションは3速MTで、ドラムブレーキはリアのみ。だが、クランク棒を刺して手回しで始動する必要のない、現代的な電動スターターなどを備え、乗りやすさも重視されていた。

シャシーには半楕円形のリーフスプリングがフロントに、リアには片持ちのキャンティレバー式スプリングが備わっていた。ハートフォード社製のショックアブソーバーはオプション。乗り心地は褒めにくい。

とはいえ、第二次大戦前のヴォグゾールは、大量生産へよりシフトした戦後のモデルとは一線を画す。Mタイプも同様だ。丁寧な手仕事が細部に施され、上級モデルの縮小版といった仕上がりを得ている。

同じ頃、サンビームでも早急な販売台数の回復が求められていた。グランプリマシンやスピードブレーカーなどから派生した、パワフルながら設計の古いモデルも少なからず存続していた時期だった。

記事に関わった人々

  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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