フォード・コルセアとヴォグゾール・ヴィクター 1960年代の英国乗用車 6台を比較 前編

公開 : 2022.01.15 07:05

1960年代、英国で普及の進む高速道路を快走した6台のサルーン。英国編集部が、かつての普通の乗用車をご紹介します。

V型4気筒のフォード・コルセア

ロンドン外周を回る環状線のA406号線。その北部に、エース・カフェというクルマ好きへオススメのスポットがある。クラシックカーの勇姿へ、しばしばお目にかかれるのだ。今回はそこに、1960年代の英国製乗用車6台にお集まりいただいた。

英国では会社でキャリアを積むと、カンパニーカーと呼ばれる貸与車両に乗ることができる。ステータスシンボルの1つで、クルマのグレードが会社での地位を表していた。クロームメッキが多いほど、上役というわけだ。

1960年代の英国乗用車 コルセアにヴィクター、ミンクス、ヴォーグ、セプター、4/72
1960年代の英国乗用車 コルセアにヴィクター、ミンクス、ヴォーグ、セプター、4/72

1960年代のビジネスマンは、デスクへ回ってきた新型フォード・コルセアのパンフレットに期待を寄せたことだろう。海賊を意味する好戦的な名前のように、運転を楽しめるモデルに乗れるのではないかと。洗練された設計を備え、ルックスも優雅に見えた。

実際は期待ほど高性能ではなかったかもしれない。それでもフォード・サンダーバードに似た雰囲気を持つコンパクトモデルとして、郊外の営業所へ務めるビジネスマンの注目度は低くなかったはず。

Dセグメントに属したコンサル・クラシックと交代するカタチでフォードが投入した、コルセア。既存のコルチナ用ドアフレームやウインドウなどを利用し、当時の会長、テレンス・ベケット氏が率いたプロジェクトの成果だった。

最初期型のモデル名は、コンサル・コルセア。1963年に発表され、すぐにコンサルというミドルネームを失っている。1965年にはバンク角60度の1.7L V型4気筒、ケント・エンジンを1966ccに拡大した、GTも追加されている。

充実した装備と仕立ての良い内装

コルセア V4 GTを今でも大切に所有している1人が、ロブ・シャンド氏。2.0L V型4気筒の個性的なビートを効くのが楽しみだという。「優れたユニットだと思います。ガサツだと評価する人もいますが、大げさですよ」

16歳からコルセアのファンだったと話すシャンド。兄弟モデルのコルチナと違い、過小評価されていると考えているようだ。庭に放置されていた、サルーキ・ブロンズに塗られたコルセアを2008年に救出。レストアして今の状態へ仕上げたそうだ。

フォード・コルセア V4 GT(1965〜1970年/英国仕様)
フォード・コルセア V4 GT(1965〜1970年/英国仕様)

1960年代のフォードのスポーティモデルらしく、見た目は少し地味。リアに目立たないスポイラーが付いている。

インテリアも同じように実用主義的。装備を充実させてしまうと、1つ上のフォード・ゾディアックMk IVのありがたみが薄れてしまう。コラム式のシフトレバーを選ぶことができたが、スポーティなフロアシフトの方がシャンドの好みらしい。

モータースポーツ誌の編集に長年関わったビル・ボディ氏のレポートを読むと、V4エンジンを載せたコルセア V4 GTの走りには納得していなかったようだ。充実した装備と仕立ての良い内装で、ファミリーカーとしては評価していたが。

もっとも、ユーザーの多くは時間通りに目的地へ到着できる能力は重視していても、グラハム・ヒルのように攻め込んだ走りは求めていなかった。カンパニーカーとして。

コルチナ Mk IIIが1970年に登場すると、コルセアの製造は終了してしまう。だが、都市をつなぐ高速道路やテーラーメイドのスーツへ夢見た時代の匂いが、今でもV4 GTには残っているように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Robrts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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