ウイリスMBからジープ・ラングラーへ 80年間の3世代を比較 自由のクルマ 前編

公開 : 2022.02.12 09:45

1941年以来、オフローダーのアイコンとして親しまれてきたジープ。英国編集部が3世代を比較しました。

ジープがニックネームだったウイリスMB

80年という月日は、人間にとっても長いものだ。クルマの場合、通常は数回の世代交代が行われる。ジープと呼ばれることになった最初期のウイリスMBと、最新のラングラーとの2台に共通点がほぼないとしても、驚く事実ではないだろう。

誕生した時代が違うだけではない。製造した会社も異なるし、クルマとしての目的も異なる。しかし同時に、基本的な根っこの部分にはつながりがある。クルマによって得られる、大きな自由だ。

カーキのウイリスMBとオレンジのAMCジープ CJ-7、ダークグリーンのジープ・ラングラー・アンリミテッド
カーキのウイリスMBとオレンジのAMCジープ CJ-7、ダークグリーンのジープ・ラングラー・アンリミテッド

アメリカといえば自由の国。独立記念日の花火に、チーズソースがたっぷりのフライドポテト。U.S.A!という叫び声が、ジープからも聞こえてきそうな気がする。

COVID-19の流行によって、好きな時間に好きな場所へ行けるという、自由のありがたさを実感したという人も多いだろう。今回は誕生から80年が過ぎた、自由を与えてくれるクルマ、ジープを振り返ってみたいと思う。

一番始めに乗るのは、源流となるウイリスMB。ジープという車名やブランド名ではなく、まだニックネームとしてジープと呼ばれていた時代のオフローダーだ。

地形を問わず、どこへでも目指せるクルマとして設計されている。現代のクルマと比べると、驚くほど簡素で質実。ダッシュボードは必要最低限で、ルーフやシートベルトもない。ステアリングホイールは驚くほど細い。

ドアの代わりにあるのは、細い布製のストラップ。側面衝突から保護してくれる能力には、疑問が残る。

簡素なボディとエンジンの自由な乗り物

ペダルの配置は、少し身体で覚える必要がある。ブレーキペダルはかかと、アクセルペダルはつま先で踏む。シフトレバーは長く、ストロークも長い。ダッシュボードの下にあるイグニッション・スイッチのボタンを押す。

運転すれば、ウイリスMBが軍用車両として開発されつつ、広く市民にも普及した理由をすぐに理解できる。シンプルなボディにエンジンが載った、クルマという自由な乗り物を体現している。

ウイリスMB(1941〜1945年/北米仕様)
ウイリスMB(1941〜1945年/北米仕様)

速度が高まっても、運転に緊張はいらない。楽しい。極めてオープンでありながら、80年前と変わらず堅牢で、どこでも走破できそうな雰囲気がある。特に苦労することなく、過酷なオフロードコースにも挑めそうだ。

この感覚は、現在まで連綿と受け継がれてきた、ウイリスMBの後継モデルにも共通するもの。数百万人のオーナーが、毎日のように自由の素晴らしさを謳歌している。

ジープならアメリカの中央、モアブ砂漠を突っ走れる。カリフォルニアのルビコン・トレイルも克服できる。

そんなイメージを膨らませつつ、筆者が実際に走っているのは肌寒い英国東部、ケンブリッジシャー州。冷たい風が、湿った落ち葉を吹き流す。本来ならアメリカでジープを楽しみたかったが、まだ渡航の自由は得られていない。

とはいえ、英国のダックスフォード帝国戦争博物館は、80年を過ぎたジープを試乗するのにふさわしい場所といえる。生まれたてのウイリスMBは、まさに自由を求めた戦いに直面していたのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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