待望の新人か? アルファ・ロメオ・トナーレ・ハイブリッドへ試乗 コンパスに近い組成 後編

公開 : 2022.05.14 08:26

ステランティス傘下のアルファから誕生した、新型クロスオーバー。厳しい競争を勝ち抜けるのか、英国編集部が評価しました。

ライバルより運転を楽しめるシャシー

前編を読まれて、トナーレアルファ・ロメオを本当に救うことができるのか、若干の疑問を抱いた方もいらっしゃるかもしれない。真のゲームチェンジャーになれるのか、実際の試乗で確かめてみたいと思う。

アルファ・ロメオの技術者は、駆動用モーターとバッテリーは、コンパクト・クロスオーバーとして適正な大きさだと主張するはず。だが、最新のハイブリッド・モデルとして考えると、最小限に近い。

アルファ・ロメオ・トナーレ・ハイブリッド160(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・トナーレ・ハイブリッド160(欧州仕様)

エンジンが休止している時間は短く、アクセルペダルを踏み込むと、比較的大きめのノイズも放つ。ホンダのハイブリッドと比べれば質感には優れるものの、ガソリンエンジンで走るBMW X1の方がより速く、洗練性も高いと感じる。

7速デュアルクラッチATも悪くはない。最上級グレードのトナーレ・ヴェローチェを選べば、大きなシフトパドルでマニュアル・モードを楽しめる。160psのクロスオーバーとしては、という制限が付くけれど。

ただし、BMWが採用する8速ATと比べると、滑らかさや変速スピード、変速タイミングなどで目立ったアドバンテージはないだろう。

シャシー側では、アルファ・ロメオらしさを高めるため、技術者はかなりの時間を割いたようだ。細部への設計変更によってタイトさを得ており、ライバルより運転は面白い。エグゾーストノートも聴き応えがあり、その印象を強めてくれる。

ステアリングは固定レシオでもクイックで、過度な緊張感はない。ドライビング体験はダイナミック。ステアリングホイールへは、攻め込まないと充分な感触が伝わってこないのが惜しい。

高速道路の長距離走行が得意分野

もう1つのストロングポイントが、乗り心地。20インチのアルミホイールを履いていた試乗車の場合は硬めながら、巧みに衝撃を吸収してくれていた。ボディロールは抑制され、ピレリPゼロタイヤが不足ないグリップやトラクションを生み出してもいた。

ヴェローチェのアダプティブダンパーは基本的な特性が通常のダンパーに近く、際立つオプションではないようだ。18インチ・ホイールを履く、トナーレTiがベストバランスかもしれない。

アルファ・ロメオ・トナーレ・ハイブリッド160(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・トナーレ・ハイブリッド160(欧州仕様)

これらの特徴が融合し、高速道路を長距離走るようなシーンは、トナーレが最も得意とする分野。ロードノイズやサスペンションノイズも小さく、車内は静かに保たれている。比較的高めの着座姿勢は快適で、居心地もいい。

インテリア全体の仕立ては、もう少し手を掛けても良かっただろう。アルファ・ロメオがBMWと並ぶような人気を掴むには、避けては通れない部分だと思う。デザイン自体は悪くないが、もっと気持ちを刺激してくれる雰囲気の方が好ましい。

よりベーシックなライバルのなかには、高級感で上のモデルも存在する。イタリアン・ラグジュアリー・ブランドたらしめる、しっとりとしたレザーがないのは寂しい。

カウリングの付いた2眼メーターは、アルファ・ロメオの定番。現代的なモニター式を採用しつつ、レトロな風合いのあるグラフィックが用いられ、鮮明で見やすい。表示内容はカスタマイズも可能だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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