景色が早送りに見える アストン マーティン・ヴァルキリー AMRプロ 800psの助手席へ同乗

公開 : 2022.05.22 08:25

サーキット専用モデルとなる、ヴァルキリーのAMRプロ。浮世離れしたパフォーマンスに、英国編集部は圧倒されたようです。

タブシャシーの構造自体が露出

アストン マーティン自ら、トップクラスのレーシングカーと同等の走行性能を持つと主張する、ヴァルキリー。そのサーキット専用モデル、AMRプロの納車が始まった。

記念すべきハイパーカーの誕生を祝うべく、同社は筆者をアメリカ・フロリダ州にある、ホームステッド・マイアミ・サーキットへ招待してくれた。もちろん誕生パーティではない。その尋常ではない速さを、体験させるために。

アストン マーティン・ヴァルキリー AMRプロ
アストン マーティン・ヴァルキリー AMRプロ

ヴァルキリーの開発は、当初の計画から大幅に遅れた。プロジェクトをともに推進してきたのが、F1チームでパートナー関係にあったレッドブル・レーシングだったが、この共同体制も既に終了している。

それでも完成にこぎつけたようだ。アストン マーティンによれば、75台以上の公道用ヴァルキリーを生産予定とのこと。サーキット専用のAMRプロも、2022年のうちに顧客のもとへ届けられるという。

AMRプロを間近に観察すると、公道用ヴァルキリーとの違いに見入ってしまう。ナンバー取得の認可を得る必要がないため、各部の作りが異なっている。ホイールベースが長いだけでなく、軽量化の図られた独自のタブ構造を備えているそうだ。

同社でクリエイティブ・ディレクターを務める、マレク・ライクマン氏に話を伺うことができた。「人間の居住性やエンジンに対する制約を回避しつつ、可能な限りタイトなパッケージングになるよう設計されています」

「余分な部分は1mmもありません。タブシャシーの構造自体が露出しています。表面的なボディパネルもありません」

過去のF1マシンと同等の速さ

そんなヴァルキリー AMRプロのステアリングホイールを今日握るのは、開発初期からテストドライバーとして携わってきたアンディ・プリオール氏。ツーリングカー・レースなどで活躍し、キャリアが終わったタイミングで誘いを受け、幸運だったと話す。

「これほど速いクルマを運転する機会がもう一度来るとは、正直思っていませんでした」。2005年にウイリアムズのF1マシンをテストした経験を持つ彼だが、このAMRプロはその速さと大きくは違わないという。

アストン マーティン・ヴァルキリー AMRプロ
アストン マーティン・ヴァルキリー AMRプロ

「今日はAMRプロの能力を引き出すことが中心ですが、開発プロセスでは、その速さを扱いやすくすることにポイントが置かれていました。この手のクルマにお金を投じたドライバーは、それを楽しみたいと考えるはずですから」

「プロのドライバーだけが迫れる、高い限界能力を作っても意味はないのです」。と、仰々しいボディの傍らで説明してくれた。

ガルウイングドアが開かれ、AMRプロの助手席に座る時が来た。実は筆者は、2021年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、公道用のヴァルキリーに乗ったことがある。その時は、先日辞任した元CEOのトビアス・ムアース氏による運転だった。

とても興奮する体験ではあったが、路面は濡れていて、トラクションコントロールは未実装という状態。慎重にスピードを調整しながらの走りだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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