完璧主義のレストア ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター ネジ1本までオリジナル 後編

公開 : 2022.07.03 07:06  更新 : 2022.08.08 07:07

徹底的にオリジナル状態が保たれた、ジャガーEタイプ・シリーズ1。30年越しで仕上げた1台を英国編集部がご紹介します。

神は細部に宿るということわざ通り

ボディがきれいになった、最初期のジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター。しかし仕事が忙しく、手つかずのまま放置された。

そうこうしている内に20年以上が経過し、COVID-19が流行。「いまレストアを再開しなければ、このままかもしれない、と考えたんです。仕上がったのは、それから1年半後でした」。とオーナーのポール・ブリッジズ氏が笑う。

ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター(1961年/英国仕様)
ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター(1961年/英国仕様)

パンデミックでサプライチェーンも滞り、ワイヤーハーネスは入手が難しかったという。それでも、2021年のEタイプ誕生60周年に完成させる目標を立て、意欲的に作業を進めたそうだ。

シリーズ1 ロードスターの歴史を調べるという意志も持っていた。JLRで働いていた彼は、データーベースへのアクセスも可能だった。しかも、当時物の部品も容易に入手できた。

果たして、完成したジャガーEタイプ。神は細部に宿る、ということわざのように、ディティールまで抜かりない。ルーカス社製ヘッドライトとトリコ社製ワイパーブレード、フロントグリルのバッジ以外、倉庫に眠っていたようにオリジナルが貫かれている。

メタラスティック社製のサスペンションとステアリングのブッシュ、ガーリング社製のブレーキホース、ルーカス社製の電装系に至るまで、純正のままで真新しい。オリジナルの足回りを追求することは、新車状態のEタイプを味わう上で不可欠な要素だった。

「一般的なレストアでは、社外で再生産されたゴムブッシュなどを用いることもあります。重要な保安部品でも。でも本当にそれで良いのか、考えさせられますね」

ボルトやナットも当時と同じもの

インテリアでは、純正品質のビニール・トリムとAピラーのシールを発見でき、満足している。4万6000kmしか走っていない内装を、可能な限り維持することも心がけた。

レストアでは、再生可能な部品が廃棄されることを、自身の経験で理解していた。予算に余裕がある事例では特に。

ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター(1961年/英国仕様)
ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター(1961年/英国仕様)

ワインレッドのシートカバーと、ウッドリムのステアリングホイールはオリジナル。ダッシュボードやキャビン後方の内張り、クロームメッキの部品も、基本的には1961年当時のものだ。

リアフードの金物は最初期の固有のもので、成形道具から作る必要があった。Eタイプへの情熱があれば、不可能なことはないらしい。

ワイヤーハーネスは劣化するため新調されたが、ターミナルブーツは再利用している。ラジエターは27か所も液漏れしており、修復できなかった。正確に復元されたものに交換してあるが、ブリッジズは心残りだと認める。

ブレーキとクラッチのシリンダー、ショックアブソーバー、エグゾーストのほか、フィルター類などの消耗品は手に入る新品。オリジナルと区別はつかない。

ボルトやナットは、当時と同じUNFタイプと呼ばれるもの。PPPや0000などと刻印されている。ブラックに塗られていたかどうかも、調べたという。

作業のなかでは、ルーカス社製のダイナモやワイパー・モーター、トグルスイッチなどに、日付コードが刻印されていることに驚いたという。アクセルペダルのブラケット固定ナットは、ブリストル・ボーファイターのものと同じだと判明した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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