インフィニティQ50オールージュ・プロトタイプ

公開 : 2014.07.22 23:50  更新 : 2021.06.24 12:34

■どんなクルマ?

アウディRS6、BMW M5、ジャガーXFR、メルセデスE63 AMG。錚々たるハイパフォーマンス・サルーンを明確にライバル視するコンセプトカーがインフィニティから発表された。その名もQ50オールージュだ。

初めて我々の目の前に現れたのは1月のデトロイト・モーターショーでのことだった。インフィニティの前任のトップで、現在はキャデラック所属のヨハン・ダ・ネイシンの考案によって開発さたこのクルマは、かの日産GT-Rのそれをモディファイしたエンジンを動力源とし、駆動方式は4WDとなる。

もともとはスタイリングに対する市井の意見を伺うために作られたモデルではあったのだが、一定の評価が集まったことにより晴れてレッドブルと結んだパートナーシップとともにロードゴーイング・プロトタイプが世に出るに至ったのである。

2度めに姿を表したのはグッドウッド・フェスティバルにてクリスチャン・ホーナーに駆られてのことである。あくまで現段階では少量生産の予定で、イギリスのショールームに並べられるのは2016年になりそうとのことだ。

このクルマのベースとなるのはその名の通り、インフィニティQ50である。しかしながら、標準のモデルとは立場を異にすることは一目瞭然だ。各所のデザイン変更によって高い性能を持つことが見て取れる。

フロント周りには、カーボンファイバー製の新たな意匠が奢られ、F1マシンからインスパイアされた2枚のスプリッターも備わっている。

ワイドになったタイヤを収めるために、フェンダーも拡大されている。またフロントのフェンダー・アーチの後方にはかなり目立つ空気の抜出し口が用意され、この穴は同時にフロント・ブレーキの冷却にも寄与すると言う。

また後方の新しいカーボン製のバンパーにはレッドブル・レーシングのRB9 F1マシンと共通のLEDストップ・ライトが鎮座し、2本のステンレス製大径テール・パイプが両サイドから突き出る。そしてトランク部には新たにスポイラーを増設することなく、空力特性を向上する造形の工夫がなされている。

その他にも、さらにダウンフォースを向上させる大型のスポイラーや、アンダー・ボディ・パネルを選択できるようになる予定だそうだ。

インフィニティは他メーカーのハイパワー・サルーンに追従すべく、Q50 Sが標準採用する3.7ℓV6エンジンよりも、より能力の高いエンジンを吟味した。

レイマロックのエンジニアであるトム・スノーボール氏は言う。”当初われわれはQ50 Sのエンジンをパワー・アップさせてオールージュに乗せる予定でした。しかしそれでは、我々の求めるパワーやトルクを十分に得られない事に研究の結果気づいたのです ”と。

そうして彼らが導き出した答えは、親会社である日産が現在使っている現行のGT-R用のエンジンをスワップするということだった。

Q50の限られたエンジン・ベイにGT-Rのアルミニウム/マグネシウム・エンジンを収めるべく、マウントには僅かながらに改良が加えられたと同時に、インレット・マニフォールドとインタークーラーは根本的な設計が見直された。さらにマッピング変更も施されたことによって、結果的には560psと61.1kg-mを発揮するに至ったのである。

炸裂するパワーは、(他にもっと適したモノがあれば違った結果だったかもしれないが)インフィニティ製の6速オートマティック・ギアボックスを介して4輪全てに伝えられる。

初期段階ではギアボックスも、より速いシフト・チェンジを可能にするGT-Rの6速デュアル・クラッチATを組み合わせる予定ではあったが、トランスアクスル方式を採るGT-Rと違い、オールージュには十分なトランク容量を持たせるために、この計画は却下になったということだ。

現段階ではまだまだ初期にほかならないが、強大なパワーとトルクを受け止めるために4WDシステムにもモディファイを加えているという。

鋼鉄とアルミニウム、カーボンファイバーを併せて作ったシャシーは、ほかに例を見ないほどの素晴らしい仕上がりだ。フロントとリアの幅はそれぞれ100mmの拡張がなされ、車高はフロントが15mm、リアが20mmされているために、標準のモデルと比べ物にならないほどの路面への接地感を実現している。

その他にも徹底した軽量化が施され、スタビライザーはフロント、リアともに強化される。また20インチのホイールはグリップの高い225/35のピレリP-ゼロ コルサを履くうえに、スプリングとダンパーは締めあげられる。これらのタイヤを収めるために拡大されたフェンダーは言うまでもなく、物々しいオーラを放っている。

■どんな感じ?

ミルブルックのヒル・サーキットをわずかに走っただけで、このクルマは見た目を優先させたモーターショーのためのコンセプトカーのレベルを完全に脱していることがわかる。

いわばこのクルマの大部分は、現実的な製品化を明確に視野に入れているのだ。

搭載するエンジンは、ショーに訪れる人々の注目を欲しいままにする。Q50 Sに搭載する3.7ℓV6ターボから、227psと23.9kg-mものドーピングが施されたGT-Rのパワープラントは、とんでもない速度まで一気に到達させることができるし、他メーカーのライバルと比べても直線でのバトルでは引けを取ることはないだろう。

0−100km/h加速は4秒”以下”、さらに最高速度は290km/h”以上”という今のところの公表値は、既存のスーパー・サルーンにおけるランキングを大いに狂わせることは必須だ。

静止状態からの加速では、4WDシステムの恩恵を受けて並外れたトラクションを発揮するゆえ、これに関しては心からのスタンディング・オベーションを送りたい。

この世に一台しか存在しないプロトタイプ乾燥重量は1825kgとなる。まだまだ、インフィニティの目標とする1800kgには達していないが、ガラス・サンルーフとスチール・ルーフが、カーボン製に置き換えられる予定だということを聞けば、目標値もさほど難しくはないとも思えてくる。

低回転域では、スロットル・レスポンスに鈍さはあるが、タービンのセッティングが煮詰まっていないことを考えれば驚くほどのことではない。

ギアボックスを改良すれば61.1kg-mよりもさらに力強いトルクを発揮することも可能になるゆえ、まだまだやるべきことはたくさん残っているようだ。”さらに大きなトルクを発生することのできる様々なギアボックスを候補に上げている”とスノーボール氏。インフィニティとメルセデス・ベンツが開発における提携を結んだことが、ひとつの答えになるかもしれない。

少なくとも、高い性能を発揮するセダンづくりは正しい方向に向かっているといえるだろう。

ステアリングはQ50ハイブリッドに採用される完全なる電子制御のものから、電子メカニカル・システムに置き換えられ、ダイレクトな操作が可能になった。その上、かなりクイックで重さも適切である。ターン・イン特性にはある種の熱狂性があり、初期のフロントのわずかな食い付きによって信じがたい速度でコーナーの峰に向かうことができる。

4WDシステムの改良のおかげで、前後に供給されるトルクは50:50になった。したがって、ハンドリングのキャラクターは極めてナチュラル。高速コーナーにおける能力も非常に高い。

引き締められたダンパーと、フロントとリアの径がそれぞれ32mmと21mmのスタビライザーのおかげでボディ・コントロールにも優れる。またグリップが非常に高いピレリのタイヤは、一貫して献身的に路面を掴み続けていた。

しかしながらタイトなコーナーでの脱出時に意図的にアクセルを開けると、アンダーステアが顔を覗かせる傾向があり、頻繁なスタビリティ・コントロールの介入も見過ごせない。もともとが乗用車であるだけに致し方ないが、それでもやはり改善を望むほかない。

今のところトルク配分をわずかに後輪よりにするのか、はたまた前後均等に配分するのかは議論中だそうだ。

セバスチャン・ベッテルは既にテストを終え、エンジニアにフィードバックは済ませている。あとはレイマロックがスプリングとブッシュを煮詰めるだけだ。

また今のところ路面のバンプに対して、少しばかり感じやすいところがあるが、こちらも生産が開始されるまでには払拭されるか、あるいは最小限に抑えられることだろう。

■「買い」か?

技術的な面ではまだまだ熟成の余地があるが、ポテンシャルはベールを脱いだ。

既に強力なエンジンを携えてはいるのだが、さらに上のレベルに到達するにはドライブラインを改善し、レスポンスをさらにシャープなものとする上で、車重を削減する必要がある。

同社によるところ、インフィニティの上層部からゴー・サインが出たとして、じっさいにショールームで目にするまでには少なくとも14ヶ月を要するという見通しだそうだ。

特別なパフォーマンス・カーたり得る役者は揃っている。あとは実現を待つのみだ。インフィニティよ、楽しみに待っている。

(グレッグ・ケーブル)

インフィニティQ50オールージュ・プロトタイプ

価格 NA
最高速度 290km/h
0-100km/h加速 4.0秒
燃費 NA
CO2排出量 NA
乾燥重量 1825kg
エンジン V型6気筒3799ccツイン・ターボ
最高出力 560ps
最大トルク 61.1kg-m
ギアボックス 6速オートマティック

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