ブースト上昇で550ps BMW M4 CSLへ試乗 ハードコアでも一般道に妥協なし 後編

公開 : 2022.10.07 10:50  更新 : 2022.10.12 11:47

歴代のMモデルでも、特別な存在といえるCSL。M社50周年の節目に誕生した限定のM4を、英国編集部が公道で評価しました。

優先順位の1番は公道用モデルとして

G82型BMW M4 CSLのインテリアは要所要所が特別仕様で、素材もスポーツ度合いの高いものが用いられている。しかし、軽量化メニューから想像するほど、カーペットやパネル類などは省かれていない。

ダッシュボードの中央には、通常のM4と同じタッチモニターが据えられ、メーターパネルはモニター式。ドライバーが望めば、ヘッドアップ・ディスプレイも装備できる。

BMW M4 CSL(欧州仕様)
BMW M4 CSL(欧州仕様)

ポルシェ911のRSで選べるような、ストラップ状のドアノブや消化器、ロールケージなどはオプションリストにもない。CSLの優先順位の1番は、あくまでも公道用モデルとして。サーキットモデルとしては2番目になる。

実際のところ、オーナーがサーキット走行を楽しむ機会は、多いとはいえない。ハードコアな雰囲気を追い求めるのもカッコイイが、快適性や実用性に支障が出ないとは限らない。BMW M社は、その采配を理解しているのだろう。

M4 CSLを発進させてみると、公道の速度域でもロードノイズやメカニカルノイズが車内へ届く。非常にパワフルで、生々しいフィーリングに満ちている。だが、圧倒されるほど濃厚というわけではない。

3.0Lの直列6気筒ツインターボ・ユニットを支えるエンジンマウントは強化され、8速ATの変速マナーもクイックに調整を受けている。低速域ではアクセルペダルを丁寧に傾け、シフトチェンジのタイミングにも気を配る必要がある。

吸気を圧縮する2基のターボはブースト圧が高められ、タービンノイズが響いてくる。アクスルもリジッドマウントされている。

郊外の道で圧倒的な速さを発揮する

とはいえ、アダプティブダンパーをソフトな状態に保っていれば、乗り心地は不満ないほどしなやか。メインスプリングとヘルパースプリングを備える専用品で、アンチロールバーも新しい。車高は8mm落ちているが、普段乗りもいとわない。

路面変化に対する反応はタイトながら、滑らかさも伝わってくる。アーチェリーのピンと張った弓に乗っているような、そんな印象を受けた。

BMW M4 CSL(英国仕様)
BMW M4 CSL(英国仕様)

見た目は前例がないほどアグレッシブ。しかし、アダプティブダンパーを引き締めない限り、乗り心地が落ち着かないということはない。

それでいて姿勢制御にはまったく無駄がない。路面の隆起や舗装の剥がれを通過しても、粗野な振動はドライバーへ伝えず、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2Rという本気のタイヤは安定。常に路面を掴み続ける。

過去の特別なBMWと比較しても、M4 CSLのサスペンションの動きや減衰力の設定は絶妙。この足まわりだけでも、体験する価値はあると思う。

公道の速度域では、タイヤの温度が充分ならグリップ力はとてつもない。ワダチに進路が乱されることもなく、操縦に対する反応は機敏で、シャシーバランスも素晴らしい。郊外の道で圧倒的な速さを発揮する、サーキット対応モデルといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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