400GTの美しい後継車 ランボルギーニ・イスレロ S V12を味わうグランドツアラー 後編

公開 : 2022.12.03 07:06

フェルッチオ本人が考案した4台目のモデル、イスレロ。5台のみ作られた右ハンドルのSを、英国編集部がご紹介します。

お金には代えられないイスレロでの体験

「父はバハマでクルマを登録していたので、わたしが引き継ぐ時に2500ポンド以上の輸入関税を支払いました」。と当初を振り返る、ランボルギーニ・イスレロ Sを所有するマーク・ガースウェイト氏。

これまで、トラブルは少なくなかったようだ。英国のランボルギーニ専門ガレージ、コリン・クラーク・エンジニアリング社などで、10万ポンド以上を費やしながら維持している。それでも、イスレロ Sでの体験はお金には代えられないものだったという。

ランボルギーニ・イスレロ S(1969〜1970年/英国仕様)
ランボルギーニ・イスレロ S(1969〜1970年/英国仕様)

素晴らしい状態が保たれてきたイスレロ Sは、1999年にブルックランズで開催されたイタリアン・カーデイというコンクールデレガンスで優勝している。今は亡き父も、マークが注ぐ愛情に満足していることだろう。

「父は、創業者のランボルギーニ氏の考えに好感を抱いていました。トラクターを作ることで、農業に関わっていたからです。レース主軸のフェラーリとは違う、ユーザーが不便を感じない最高のスポーツ・ロードカーを作ろうという考えも」

クラシックカー・オーナーは、様々なこだわりを持っていることが多い。だがマークは、これまでに出会った人々とは違う。他人が自らの愛車を運転する様子を、これほどうれしそうな表情で眺める人は決して多くない。

過小評価されてきた美しいスタイリング

イエローが眩しいイスレロ Sへ近づく。リアバンパーが意外なほど高い位置に据えられている。極めて特徴的だが、同時期のエキゾチックと比べれば穏やかな雰囲気がある。ボディカラーの影響もあって、主張も小さくないけれど。

このスタイリングは、過小評価されてきたように思う。リトラクタブル・ヘッドライトや、BMWのようにキックラインが付いたCピラー、短く四角いテールエンドなどの要素が、ロングノーズ・ショートテールのプロポーションを美しくまとめている。

ランボルギーニ・イスレロ S(1969〜1970年/英国仕様)
ランボルギーニ・イスレロ S(1969〜1970年/英国仕様)

丁寧に観察していくと、ディティールも上品で繊細。側面には前後に伸びる穏やかな折り目が与えられ、シャープな印象を強めている。フロントフェンダーの頂部が立ち上がり、C2コルベットのような印象もなくはない。

イスレロより10年ほど前の、ジェット戦闘機に影響を受けたジェットエイジ・デザインの趣きが残る。裏面がレザー仕上げのボンネットを開くと、極めて美しく左右対称にデザインされたV型12気筒エンジンが姿を見せた。

クッションの効いた運転席へ腰を下ろすと、大きなグラスエリアとスリムなピラー越しに素晴らしい視界が広がる。吊り下げ式の3枚のペダルは、間隔が完璧だ。

インテリアのデザインは、トラディショナルとモダンが融合している。ダッシュボードには、フェイクウッドのパネルがあしらわれ、フィアット由来のロッカースイッチが並ぶ。

魅力度でいえば、先代の400GTの方が高いかもしれない。だが、端正なスタイリングには似合っているように感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームズ・エリオット

    James Elliott

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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