400GTの美しい後継車 ランボルギーニ・イスレロ S V12を味わうグランドツアラー 後編

公開 : 2022.12.03 07:06

友人も幸せを感じるであろう笑顔

試乗が終わりに近づくにつれ、筆者は悲しい気持ちになってしまったが、オーナーのビルはもっと辛い心境だろう。彼は数年前にパーキンソン病と診断され、運転免許を放棄せざるを得なかった。

その後は友人へ運転を頼み、イスレロ Sと一緒の時間を叶えてきた。アクセルペダルを踏むたびに溢れる彼の笑顔に、友人も幸せを感じているのではないかと思う。

ランボルギーニ・イスレロ S(1969〜1970年/英国仕様)
ランボルギーニ・イスレロ S(1969〜1970年/英国仕様)

「辛い現実ではありますが、友人と過ごす時間は素晴らしいものでもあります。惜しまれるのは、次の世代へ引き継ぐことができなかったことですね」。とビルが言葉を選ぶ。

「信頼性はわたしが一番良く知っています。たとえクルマに興味があっても、経済的な負担まで息子に託すわけにはいきませんから」。恐らく遠くないうちに、このイスレロ Sは売却されるのだろう。

だが今は、息子と一緒に巡る夏の自動車旅行を計画している。もちろん、このイスレロ Sで。ビルの笑顔が絶えることは、もうしばらくはなさそうだ。 James Elliott(ジェームズ・エリオット)

※この記事のオリジナルは、2017年5月に執筆されたものです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームズ・エリオット

    James Elliott

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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