7速MTが384psフラット6に ポルシェ 911 カレラTへ試乗 理想的なパッケージング

公開 : 2022.11.28 08:25

お手頃な側にある911で7速MTが選べるように。軽量でシンプルなパッケージングを、英国編集部は高く評価します。

ベーシックな水平対向6気筒に7速MT

ポルシェ911 カレラは素晴らしいスポーツカーだ。レスイズモア、少ないことはより良い、ということが体現されている。しかも世界で最も有名なドイツ製スポーツカーの、入口側に位置している。

しかし992型の登場以来、惜しまれていた点が1つあった。911 カレラSでは選べるマニュアル・トランスミッションを、素のカレラでは指定できなかったのだ。特別なアイテムのように、ポルシェは2018年以来出し惜しみしてきた。

ポルシェ 911 カレラT(北米仕様)
ポルシェ 911 カレラT(北米仕様)

ところが遂に、ベーシックな水平対向6気筒エンジンと3ペダルの7速MTを組み合わせられるようになった。新しい911 カレラTで。

ちなみにオリジナルの911 Tは、1968年に登場。スポーティな仕様ではなく、水平対向4気筒エンジンを積んだ912の後継となるような、デチューンされた質素な911だった。

それから半世紀を経て、ポルシェはモデル末期を迎えた991型の特別仕様として911 カレラTを販売した。2017年のことだった。それ以来、「T」という頭文字はケイマンとボクスター、マカンへ展開。独自のグレードとして成功を収めている。

新しい911 カレラTの内容は、991型のそれとかなり近い。後輪駆動のクーペボディのみに設定され、機械式リミテッドスリップ・デフと、PASMと呼ばれるアダプティブダンパー付きのスポーツサスペンションが装備される。

薄いガラスと軽いバッテリーで軽量化も

先代と異なる部分もある。991型ではカレラSと同じファイナルレシオが組まれていたが、992型では通常のカレラと変わらない。

アルミホイールは、カレラSにも設定される20インチか21インチを選べる。スポーツエグゾーストは標準だ。

ポルシェ 911 カレラT(北米仕様)
ポルシェ 911 カレラT(北米仕様)

厚みの薄いガラスと軽いバッテリーを採用することで、軽量化も図られている。先代と同じく、通常のカレラでは選べない後輪操舵システムもオプションで装備できる。基本は2シーターだが、リアシートは無償オプションで用意される。

911 カレラTの英国価格は9万8500ポンド(約1635万円)と、ベーシックなポルシェと呼べるほど安くはない。それでも、991型のカレラTより数1000ポンド(数10万円)もお手頃になった。

通常のカレラと比べると8700ポンド(約144万円)高く、カレラSより4300ポンド(約71万円)安い。カレラSでも7速MTは選択でき、66psも最高出力は高い。カレラTは少し悩ましい中間位置にある。

差別化も忘れてはいない。ボディサイドの専用ステッカーやダークアガット・グレーに染められたエンブレム、スポーツテックス素材で仕立てられたスポーツシート、ヘッドレストにあしらわれたポルシェのロゴなどで違いが主張されている。

それらが価値あるアイテムかどうかは、人によって受け止め方が違うだろう。だが、カレラTは素晴らしい。運転すれば、ポルシェが今頃になってリリースした理由を聞きたくなるほど。マーケティング上の理由なのだとは思うが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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