伝説的マシンが527psで復刻 シェルビー・デイトナ・コブラへ試乗 エンジンはGMのLS3

公開 : 2023.01.08 08:25

1960年代のル・マン・レーサーが現代で復刻。他に例を見ないほど豪快で魅力的な走りを、英国編集部は高く評価します。

伝説的なレーシングマシンを復刻

1960年代に作られた、伝説的なレーシングマシンのナンバー付き車両を、公道で運転するという貴重な機会が新年早々やってきた。復刻版とはいえ、歴史的なモデルを直接的に体験できることなど滅多にない。

多くのクルマ・マニアの羨望を集めてきたシェルビー・デイトナは、過去に少なくないレプリカが作られてきた。公式に認可を受けた、コンティニュエーション・モデルも存在する。だが、今回の例ほど見事な例はこれまでなかったと思う。

シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)
シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)

オリジナルのシェルビー・デイトナは、空力特性に優れるフェラーリ250 GTOへ対峙するため、ロードスターのシェルビー・コブラをベースに生み出された。キャロル・シェルビー氏が、より高い最高速度を求めて。

その指示を受けたシェルビー・アメリカンの技術者、ピート・ブロック氏は、基本的にコブラと同じパッケージングをベースに流麗なクーペボディをデザイン。コーダトロンカ・スタイルのテールを備え、空気を滑らかに受け流しつつ息を呑むほど妖艶だった。

果たして、シェルビー・デイトナは1965年のFIAスポーツカー世界選手権へ参戦。 セブリング12時間レースやル・マン24時間レースでは、クラス優勝を掴んでいる。製造数は僅かに6台。近年の取り引き価格は10億円を超えるというレアぶりだ。

エンジンは527psのLS3 エアコン付き

今回のクルマは、シェルビー・インターナショナル社の正式な認可を得ている。製造は南アフリカに拠点を置くハイテク・オートモビル社。英国ではル・マン・クーペス(LMC)社が販売を担う。過去のレプリカとは混同するべきではないだろう。

ただし、オリジナルを寸分違わず正確に再現したモデルとも違う。オリジナルのプロポーションを維持しつつ、快適性を求めてキャビンはわずかに広げられている。メカニズムでも、いくつかのアップデートが施されている。

シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)
シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)

本来、シェルビー・デイトナが搭載していたエンジンはフォードのV8だった。だが、筆者が試乗したデイトナ・コブラに載っていたのは、GMのLS3ユニット。エアコンとパワーウインドウも装備されていた。

希望すれば、5.0L V8のフォード・コヨーテユニットを指定することもできる。LMCのオリバー・ロウ氏の話では、LS3ユニットの方が排出ガス規制の基準クリアが容易なのだという。6.2Lの排気量から、527psを生み出している。

当時のレーシングカーは、公道モデルに驚くほど近かった。自走でサーキットへ向かい、そのままレースを戦ったマシンも珍しくなかった。21世紀に再現されたデイトナ・コブラはモダナイズされている。しかし、現代の水準では大きな忍耐が必要だ。

LS3ユニットは62.7kg-mという豊かな最大トルクを3000rpmから発するため、基本的にどのギアを選んでいるか気にせず、低回転域から滑らかに加速できる。しかし、交通量の多い市街地での運転は楽しいものではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事