伝説的マシンが527psで復刻 シェルビー・デイトナ・コブラへ試乗 エンジンはGMのLS3

公開 : 2023.01.08 08:25

常識的な速度域でも体験は濃密

キャビンは穏やかに運転していても騒がしい。LMCは、デモ車両の試乗車にオプション扱いのオーディオシステムを搭載しなかったが、その理由もうなずける。恐らくロクに聞こえないはず。そのかわり、V8エンジンの重厚なサウンドを楽しめる。

エアコンは備わるが、冬場でも涼しくはない。真夏には巨大なエンジンの熱がバルクヘッドを介して伝わり、車内の温度は下がりきらないと思う。パワーウインドウは付いているが、窓が開くのは10cm程度。気休めでしかない。

シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)
シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)

ダンパーはオーリンズの高級な調整式が備わるものの、乗り心地はハード。紳士的という表現とは対局にある。特に市街地にある速度抑止用のスピードバンプは、丁寧に乗り越えなければならない。

唯一、電動油圧式のパワーアシストが付いたステアリングの重み付けは現代的。リムの太い、レザー巻きのステアリングホイールを回す力が軽減されている。だが、クラッチペダルはスポーツジムのマシン級に重い。

郊外へ足を伸ばせば、その忍耐が報われる。サルテ・サーキットのような長いストレートはなくても、2023年の基準でも圧倒されるほど速いことを確かめられる。常識的な速度域でも体験は濃密で、限界領域まで迫る必要はない。

エンジンのレスポンスは即時的。アクセルペダルの角度とシンクロするようにサウンドが張り詰め、加速Gが鋭く立ち上がる。0-100km/h加速は3.9秒。2速で6500rpmのレッドラインまで引っ張ると、130km/hへ届いてしまう。

魅力に満ちた圧倒されるほど豪快な走り

そして何より、現代の高性能モデルでは味わえないレベルの、感覚的な興奮を享受できる。交通量の少ない開けた道を、英国の制限速度となる96km/hで運転すれば、160km/hで走っているような刺激に浸れる。

操縦性で気になったのはステアリング。負荷が高まっても、やや軽すぎるかもしれない。だとしても、フロントノーズの反応はシャープで正確だ。

シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)
シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)

リアタイヤは、トラクション・コントロールが存在しないことを考えれば落ち着いている。タイトコーナーへ突っ込みすぎると、フロントタイヤが外へ流れてしまう。侵入速度はしっかり探る必要がある。

とはいえ、デイトナ・コブラのマナーは至って後輪駆動。速度が上昇するとともにアンダーステアは収まり、高速コーナリングは印象的なほど安定していた。最高速度は328km/hがうたわれているが、確かに許容できそうに感じた。

英国価格は18万ポンド(約2880万円)とお手頃とはいいにくいが、現代のスーパーカーと同等の金額ではある。圧倒されるほど豪快な走りには、他に例を見ないほどの訴求力がある。復刻版ではあるが、単なるレプリカとは一線を画した魅力に満ちている。

シェルビー・デイトナ・コブラ(英国仕様)のスペック

英国価格:18万ポンド(約2880万円)
全長:4150mm(オリジナルモデル)
全幅:1720mm(オリジナルモデル)
全高:1180mm(オリジナルモデル)
最高速度:328km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:9.6km/L(予想)
CO2排出量:−
車両重量:1400kg
パワートレイン:V型8気筒6161cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:527ps/5600rpm
最大トルク:62.7kg-m/3000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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