社員からのクリスマス・プレゼント ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペ 特別な手作り 後編

公開 : 2023.05.27 07:06

ウーズレーを救った社長に送られた、特別な2ドア・コンバーチブル。見事な状態を保った1台を、英国編集部がご紹介します。

同時期のベントレーに並ぶ動力性能

ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペが、ウーズレー・スーパーシックス・サルーン用のオーバーヘッド・バルブ直列6気筒エンジンを搭載し、排気量が3485ccであることは事実。最高出力は109psと、1937年としては強力といえた。

シャシーは短縮され、ルーフが切断され、25 ドロップヘッド・クーペの車重は1720kgと、スーパーシックス・サルーンより軽く仕上がっていた。パワフルなコンバーチブルが誕生しても、当然といえた。

ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)
ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)

AUTOCARは1938年4月に、3日間をかけて1600kmの長距離試乗へ挑んでいる。その結果によれば、0-400m加速で144km/hに到達。0-97km/h加速時間は19.1秒と、優秀な数字を残している。同時期のベントレーに並ぶ動力性能といえた。

補強用のクロスメンバーが前後に組まれ、シャシー剛性も試乗では高く評価されている。ただし、カーブではボディロールが小さくなかったようだ。

ナフィールド爵へ贈られた25 ドロップヘッド・クーペを試乗していたなら、違う印象を受けていただろう。リアアクスルのレシオは、量産車の4.2:1ではなく3.8:1に設定され、加速はより鋭いはず。リアのダンパーも2本ではなく、4本が組まれていた。

実際、筆者が2023年に運転してみても、車重が軽いとはいえないセパレートフレーム構造ながら、ボディロールはしっかり抑えられている。戦前のモデルでありながら。

10年間ほど愛用したナフィールド

ほかにも、量産仕様と異なる部分は多い。ボンネットを開くと、クロームメッキされた部品が多用されている。カムカバーやブラケットまで、光り輝いている。エンジンにはツインSUキャブレターでガソリンが送られ、エアフィルターも巨大だ。

ボンネットの後方から、リアのホイールアーチに向けて滑らかに弧を描く、小柄ながら優雅なスチール製ボディは量産版と変わらない。ラジエーターグリルの両サイドには、巨大なP100ヘッドライトが睨みをきかせる。トランペットホーンも目立つ。

ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)
ウーズレー25ドロップヘッド・クーペ(1937年式/英国仕様)

フロントグリルの上部には、バックライト付きのウーズレー・エンブレムが据えられている。追い越しする際、ヘッドライトを消しフォグライトを点けるという、ナイトパスと呼ばれるシステムも備わる。

インテリアも、量産仕様と概ね共通。クリーム色のレザー内装とブラウンのウールカーペットで、上質に仕立てられている。ただしナフィールドのクルマの場合、ドアの内張りが専用品。荷室を開くと、丁寧な仕事によるスーツケースが3個収まっていた。

社員からクリスマスプレゼントを受け取ったナフィールドは敬意を示し、10年間ほど愛用したそうだ。モーリス・モーターズの工場へ訪れる際は、ブラックの25 ドロップヘッド・クーペが定番だった。走行距離は約8000kmへ伸ばした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

社員からのクリスマス・プレゼント ウーズレー25 ドロップヘッド・クーペ 特別な手作りの前後関係

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