ポルシェ新デザイナーが語る「流行に左右されない魅力」 次期911も伝統を受け継ぐ レトロではなく過去への深い敬意

公開 : 2026.10.20 07:45

初めて入手したポルシェは996

――それをエンジニア側の要求とどう両立させるのでしょうか?

「フォルムと機能は一体です。わたしはエンジニアリングチームと話し合い、解決策を見つけます。例えば『ラジエーターはどこにあり、どこに配置できるか?』とか、『ここにもっと張りを与えてショルダーを際立たせたいが、それによって空力特性はどうなるか?』といった具合です」

ポルシェ・ミッションSのデザインスケッチ
ポルシェ・ミッションSのデザインスケッチ    ポルシェ

「インテリアについても同じです。アナログとデジタルの要素をどれくらい必要とするかを検討し、そのバランスを模索します。スクリーンを搭載する場合、サーキットでの走行が多いクルマにはどのくらいのサイズが必要か? 車内に本当に必要なものは何か、不要なものは何か?」

――いずれは新世代の911をデザインすることになるでしょう。それはワクワクすることですか、それとも怖いことですか?

「ワクワクしますよ。学生時代を終えて初めて手に入れたポルシェは996でした。それは自分に手の届く価格のポルシェで、本当に気に入っていました。3.4L、ブラックで仕上げられた内外装、5000rpmより回転数を上げるとエンジンが唸りを上げ、クルマが生き生きと動き出す。あの瞬間は鳥肌が立ちますね」

「わたしにとって、911は自動車デザイン界のアイコンです。そして、その次なるモデルを創り出すことは、この上ない機会です。過去を尊重しなければなりません。『すべてを一新しよう』と言って、これまでのコンセプトを捨て去るわけにはいかないのです。言わば、厨房のシェフのようなものです。微調整を重ね、塩分や食材を適切に加減して、程よい味に調える。辛すぎてもいけない」

流行を追わないタイムレスな魅力

――複数のブランドが、クルマから無駄な要素を取り除き、すっきりとしたデザインを追求しています。これは現在のトレンドだと考えますか?

「ポルシェはトレンドを追うブランドではありません。つまり、モダンではありますが、流行に左右されるわけではありません。時計といえば、時代を超越したものを思い浮かべるでしょう。それがわたしの考えるポルシェです。あらゆるトレンドを追いかけるわけにはいきません。長く存続するブランドだからです。車内にはテクノロジーが必要ですが、それは永続的な形でなければなりません。カレラGTを思い浮かべても、スクリーンは見当たりませんし、インテリアは時代を超越した美しさを保っています」

ポルシェ・ミッションSのデザインスケッチ
ポルシェ・ミッションSのデザインスケッチ    ポルシェ

「将来を見据えてテクノロジーを考える必要があります。わたし達にとって意味があるもの、そうでないものは何か? シンプルさもまたタイムレスなものです。単に流行に乗るためだけに表面を装飾するようなことはしたくありません。ポルシェは常にそこに佇んでいて、人々が『美しい。運転してみたい』と思うような存在なのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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