イシゴニス賞 豊田章男(トヨタ自動車CEO) AUTOCARアワード2018

公開 : 2018.05.26 11:40

将来のことはわからない

いまから10年後、20年後のクルマを取り巻く環境を豊田自身はどう思い描いているのか、聞いてみた。わたしには皆目見当がつかないからだ。「その答えは準備してあります」と彼はいう。「先日、ウォーレン・バフェットがあなたの椅子に座って同じ質問をしたからです。同じ答えをしましょう」

伝説の大富豪と同じインサイダー情報を貰えるとわたしは興奮し、耳をそばだてた。だが肩透かしを食らった。

「バフェットさんにも言ったのですが、将来いったい何が起こるか、わたしにはわかりません」豊田は笑って答える。「バフェットさんはわたしの答えを褒めてくれましたよ。こういうとき、多くのビジネスマンは実現できそうもないことをいうものだと。わたしがそうでないことを知って、彼は満足したようです」

将来に備えるもっとも良い方法は、いつも変化に対応できるようにしておくことだと豊田は信じている。「素早く変化できるように可能なかぎり準備しておかなければなりません。もちろん他の会社と同じように、われわれにも今の目標はあります。でもひとつだけ確かなことは、明日の市場は今日の市場とは違うということです」

この変化に関する会話を通じて、豊田が祖父・喜一郎の格言は今日のように変化の速いデジタル社会においても依然として有効だと強く信じていることがわかり、わたしは魅了された。「祖父は自動織機の会社を自動車会社へと作り変えました」と彼はいう。「今、われわれは自動車会社からモビリティの会社へと変わりつつあります。類似する点はとても多いと思います」

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