BMW i3

公開 : 2013.07.11 20:00  更新 : 2017.05.29 18:00

■どんなクルマ?

BMWのiブランドの最初のモデルが、電気自動車、i3である。このモデルは、2011年のコンセプト・モデルとして発表されたモデルで、いよいよ今年の終わりには販売が開始されることになる。今回試乗したのは、生産モデル寸前のプロトタイプである。

そのプロダクション・モデル寸前のモデルは、昨年のロサンゼルス・モーターショーで発表された姿とほとんど異なるところはない。2ドア・クーペのカタチではあるが、メルセデス・ベンツBクラスとは異なりBピラーがないコーチ・ドアを備える。

i3はカーボンファイバーをベース構造とする最初のBMWのプロダクション・モデルとなる。その結果、電気自動車としては例外的に軽い1195kgのボディ・ウエイトを可能としている。また、特許を取得してるサイドシルのハニカム構造は、対クラッシュにおいて有効な効果を上げるとされている。

モーターは、リア・アクスルに低くマウントされる。モーター自体の重さは130kgで、そのパワーは168bhpだ。これは、1トンにつき141bhpという値となる。これはミニ・クーパーSに対して10bhp低い値だが、驚くべきはそのトルクだ。25.4kg-mという値は、1トンあたり0.7kg-mクーパーSより大きく、しかもそのトルク・ピークの発生回転は1600rpmと異常に低い。

トランスミッションはシングル・レシオだが、コンフォート、エコプロ、エコプロ+という3つのモードを持つ。

パフォーマンスは0-60km/hが3.8秒、0-100km/hが7.2秒だ。最高速度はバッテリーの保護という観点から150km/hに抑えられているが、その時のモーターの回転数は11400rpmになる。

ヨーロッパのテスト・サイクルによれば、その航続距離は最高190kmというが、BMWは冬場では130km、夏でも160kmというのが現実的な値だとしている。しかし、英国のユーザー・テストでは、平均的な通勤距離は1日50km程度と発表されているので、日々の機動性の要件を充分に満たしているとBMWは考えている。

また、レンジ・エクステンダーもオプションとして用意される。フロント・シートの下に9.0ℓの燃料タンクを備え、エンジンはマキシ・スクーターのBMW CT650GTに使われる650ccの2気筒ガソリンが備えられる。このエンジンは、バッテリーへ電源を供給するために使用され、それ自体が動力としてクルマを動かすことはない。このレンジ・エクステンダーを使えば、航続距離は300kmと飛躍的に向上する。

i3の電気モーターを動かすのは22kWhのリチウム・イオン電池で、最高6年または16万kmの保証がつけられる。バッテリー自体は230kgの重さがあり、96個のセルで構成される。バッテリー自体はエアコンによって20℃が保たれるが、何かしらの損傷を受けた場合、セル単位で置き換えが可能だという。

充電時間は条件によって異なるが、壁に設置されたボックスチャージャーでは6時間、40kWの急速充電器だと20%から80%への充電時間は僅かに30分だという。

ボディの重量配分はフロント50%、リア50%と理想的なもの。フロント・サスペンションはマクファーソン・ストラットで、リアが5リンク。重量の軽減と横方向の揺れを防ぐため、タイヤは155/70という細いものが19インチ・ホイールと組み合わせられる。

■どんな感じ?

大きなサイドシルをまたいで乗り込むドライビング・シートは高めなセッティングだ。残念ながらわれわれがドライブしたプロトタイプは、そのインテリアについてはカバーがされていたが、BMWによれば、最新のコンセプト・モデルと大きく変わることはないという。水平基調のモダンなダッシュボードに、アップライトなシートに寝かされたステアリングがセットされる。大きく傾斜したフロント・ガラスと深いダッシュボードなどの感じは、メルセデス・ベンツAクラスに近いものがある。

リア・シートは大人2人には充分なスペースがあるが、リア・ウインドーは固定だ。また、トランクもそれほど大きくなく、オープニング・レベルもやや高い。

メイン・コンソールは、ステアリング・コラムから延長された部分に、スターター・ボタン、パーキング・ブレーキ、そしてシフト・ギアが並べられ、フロント・シートの中央に位置するセカンド・クラスターにはドライブ・モード・スイッチがある。

親指でスターター・ボタンを押し、ギアレバーをDにシフトする。すると、そこには新しい世界が広がるのだ。微かな電気モーターの唸りが聞こえ、タイヤ・ノイズを別とすれば、キャビンの中は本当に静かな空間が保たれる。

1、2マイル走ってまず気づくのがそのステアリングのダイレクトさだ。電気油圧アシストを受けるそのステアリングは、都市部を走るには最適な重さで、セルフ・アライニング・トルクが比較的強めなセッティングだ。

その比較的軽い重さのせいもあって、i3は瞬間的な加速と快活なペースを保ってくれる。リア・ホイールに25.4kg-mのトルクをフルに掛けるのは本当に緊急時のみといった感じで、通常はフル加速を味わう前にスロットルを緩めてしまうだろう。

デフォルトのドライビング・モードはコンフォートにセッティングされている。このモードでは最大のパフォーマンスを発揮するようにセットされる。エネルギーの回収率や、ブレーキの効果、スロットルに対するパワーの割合は、選んだモードによって異なる。しかし、最も効率的なエコプロ+モードであっても、スロットルの遅延などは感じられない。また、エコプロ+モードでは最高速度は80km/hに制限され、エアコンのパフォーマンスも制限される。その代わり、最大の航続距離をもたらしてくれることとなる。

継ぎ目のないパワー・デリバリーとエネルギー回生システムがもたらす制動性能は、i3が素晴らしいシティカーであることを証明している。更に、その機敏さがこのクルマを更に魅力的なものに見せているのだ。

軽いボディと低くマウントされたバッテリーは、非常にレスポンスに優れたドライバビリティを提供してくれる。その高いボディにもかかわらず、運転することが楽しい類のクルマである。比較的速いスピードでコーナーに入ると目立つロールがあるが、スロットルのトリミングによってその量は調整可能だ。

本当の意味での乗り心地は、今回のようなテスト・トラックではなく、一般公道を走らないとわからないが、比較的長いホイールベースとサイドウォールの高いタイヤによって、快適な乗り心地であることは確認できた。ただし、小さなショックは良く吸収するが、さすがに大きいバンプなどには対応できないようだった。

■「買い」か?

BMW i3は7月29日にワールド・プレミアがロンドンで行われる。デリバリーは英国では今年の末と予定されている。価格は未発表だが、おそらく£30,000(450万円)程度で、レンジ・エクステンダーは£2,000(30万円)のオプションとなるだろう。

i3は伝統的な感覚のファミリーカーではない。既存のシティカーに代わる新しい感覚、しかも本質的に実用的な面を持ち、乗っていて楽しいクルマである。素晴らしいパフォーマンスを持ち、目立ち、魅力的なハンドリングとドライビングのしやすさを持つ優れたシティカーであることは間違いない。しかもCO2も排出しないし、ここロンドンでは渋滞税も免除される。i3は、外観からも内面からも新しいモータリングを提唱するクルマとなるだろう。

(グレッグ・ケーブル)

BMW i3

価格 £30,000(450万円)
最高速度 150km/h
0-100km/h加速 7.2秒
燃費
CO2排出量 0g/km
乾燥重量 1195kg
エンジン モーター
最高出力 168bhp/11400rpm
最大トルク 25.4kg-m
ギアボックス シングル・レシオ

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