英国版中古車のすゝめ オースチン・アレグロ コンパクトカーのほろ苦い過去

公開 : 2019.11.10 07:50  更新 : 2020.12.08 10:56

悪評にさいなまれたのは過去のもの。21世紀に生きながらえるオースチン・アレグロは、興味深いクラシックカーという評価を得ています。1973年にブリティッシュ・レイランド社が生見出した個性的なコンパクトカーをご紹介します。

先進的な装備を搭載していたアレグロ

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
1973年5月に自動車雑誌の表紙を飾り、18ページの特集が組まれたアレグロ。世界初のハイドラガス・サスペンションに5速マニュアル、フロントのディスクブレーキ。オースチン1100・1300より車内空間も荷室も広くしつつ、車重は軽くなり、衝突安全性も高められていた。

アレグロにはとても肯定的な反応が集まっていたが、角の取れた四角形のようなステアリングホイールは評論家の評判を下げてしまった。「操縦性は信じられない形状のステアリングホイールによって損なわれている」 と記されている。

オースチン・アレグロ(1973〜1982年)
オースチン・アレグロ(1973〜1982年)

時代は移り変わり、初期のモデルに付いていた四角形のステアリングホイールは、今は人気アイテムとなった。ずんぐりしたスタイリングも1970年ぽい。

アレグロはAシリーズとEシリーズと呼ばれたエンジンを搭載し、1100と1300、1500、1750が用意され、1750SSがトップグレード。当時の記事には「広い車内には装備も充実。スピードを上げてもスムーズで静か。操縦性も優れ、ほとんどの条件で乗り心地も滑らか。価格も競争力がある」 と良い評価が並ぶ。

だが実際は、サスペンションは舗装の剥がれたくぼみで底突きした。車内空間は広かったが、4ドアボディでもリアシートへの乗降性は良いといえず、評判も高くはなかった。そこで1974年にブリティッシュ・レイランド社(BLMC)は改善ほ施す。

製造品質の悪さが最大の課題

個性的な4角形のステアリングホイールは置き換わり、1975年には乗り心地や外気導入も向上。だがEシリーズのエンジンを搭載した5速MTは冴えないままだった。1100のうるさいエンジンは批判の的だったが、BLMCの前輪駆動モデルの中では、シフトフィールはベストだった。

ギア比が高かったおかげで、馬力の割には高速巡航も可能。最高速度は高くなかったが、1750は144km/hで、1100でも128km/hくらいでの走行も許した。リラックスした走りと良好な燃費を実現していた。

オースチン・アレグロ(1973〜1982年)
オースチン・アレグロ(1973〜1982年)

アレグロには様々なバリエーションがあり、好みのクルマ探しに没頭する価値もある。初期の1750SSは象徴的なモデルで、最高出力は76ps。1974年に登場したスポーツとハイラインにはSUキャブが2基付いて、91psを発生させた。

おかげで走行性能も大きく引き上げられた。1970年代半ばの普通のハッチバックで、0-96km/h加速10秒というダッシュ力は良い方だ。

1974年後半に登場したバンデンプラスは、シートの肉厚が増して車内は窮屈だが、滑らかで静かに走った。1979年に登場したエクイップは、ツインキャブの2ドアのみの設定。「ホットハッチ」の人気にあやかったグレードだった。

製造品質は、アレグロ最大の課題。当時のBLMCはストライキが多く経営も不安定で、作りは残念なものだった。一方で現在まで生き残っているクルマは、皮肉にもきちんと組み立てられた少数エリートである可能性が高い。

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