【コンパクト・クロスオーバーの新基準】フォード・プーマ STラインに初試乗

公開 : 2020.01.19 10:20

走りに拘るドライバーも喜ぶコンパクト・クロスオーバーがフォードから登場。上位モデルにはハイブリッドが搭載されますが、見どころはSTラインの、クラスをリードする走行性能といえそうです。フランスで評価しました。

待ち望んできたコンパクト・クロスオーバー

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
わたしたちは長い間、コンパクト・クロスオーバーという分野で、新基準を設定するモデルを待ち望んできた。遂に登場したフォード・プーマは、その基準をそっと示したのではなく、大きく超えてきたといっていい。

フォード・プーマは、フィエスタをベースにした背の高いSUV風クーペ。先代の車高の低いプーマの存在も懐かしいが、時代に合わせて変化した。自動車メーカーの稼ぎ頭は、ステーションワゴンやサルーンからクロスオーバーへと交代している表れだ。

フォード・プーマ 1.0エコブースト 155 STラインX
フォード・プーマ 1.0エコブースト 155 STラインX

ボディはひと回り大きくなった。フィエスタと比べると54mm高く、146mm長い。ホイールベースも96mm伸ばされ、全幅は71mm広げられている。

クロスオーバーの場合、活発な運動性能を得ようとすると、サスペンションを引き締めるために乗り心地で難が出ることが多い。プーマは全幅が広がり、トレッドは58mmもフィエスタより広げられた。全幅を広げることで伸びた全高を補い、重心高が上がることを打ち消している。

メカニカルな構成はシンプル。すべてのプーマには、当面1.0Lのガソリン・ターボエンジンが搭載される。追って1.5Lのディーゼル・ターボエンジンも追加になる予定。またフォードらしく、ホットモデルも登場するだろう。

3気筒の1.0Lエンジンは、4種類の選択肢から選べる。通常の最高出力95psと124psに、マイルドハイブリッドの付く125psと155psが用意される。

電動化の進化を匂わせる空き地

マイルドハイブリッドはフォードが「mHEV」と呼ぶシステム。スターター・ジェネレーターが、ターボラグを埋めて低回転域でのトルクを太くする。二酸化炭素の排出量を減らし、ほんの少しプーマを速くしてくれる。

スターター・ジェネレーターのモーターは15psと5.1kg-mの性能を持つが、基本的には低回転域で有効となる。「mHEV」と聞くとEV寄りのハイブリッドに思えるが、マイルドな内容のクルマには合っていない名前に感じる。

フォード・プーマ 1.0エコブースト 155 STラインX
フォード・プーマ 1.0エコブースト 155 STラインX

ギャンブル依存症を止めるキャンペーンのスローガン、「楽しく(FUN)感じなくなったら止めよう」の、FUNが太文字で書かれていることを思い出してしまった。

プーマは電気だけの力では走れない。それでもフォードが掲げる、2022年までに販売する半数以上のモデルに何らかの電動化技術を搭載する、という半数にプーマも加えることはできる。今のところ、プーマのEV版やPHEV版の話は聞こえてこない。

しかし、荷室のフロア下には、このプーマに積まれている控え目なリチウムイオンバッテリー以上に大きいバッテリー用の空間が確保されている。フォードが次の一手に備えて確保した「空き地」だ。

この空間は、スターター・ジェネレーターを搭載するマイルドハイブリッド版では、メガボックスと呼ばれる。聞こえに興奮しそうになるが、実際は大きな排水口の空いた、容量80L分のプラスティック製ケースが収まっている。

つまり、泥の付いた物を積んでも簡単に洗い流せる荷物おき。フォードは今後、バッテリーサイズの大きさに合わせて、このメガボックスの大きさを変えることもできるはず。通常のガソリンエンジン版の場合、スペアタイヤを積むことができる。

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