【量産最強のフォード】 フォード・シェルビー・マスタングGT500に試乗

公開 : 2019.12.06 09:50  更新 : 2022.08.08 07:52

SUVのEVへマスタングの名前が与えられたことに、複雑な気持ちたっだ筆者。しかしフォードは、ポニーカーが従来から備えてきたスピリットを忘れたわけではありませんでした。マッスルカーの本場、LAで評価しました。

SUVではない、ガソリンで走るマスタング

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回のマスタングは、スーパーチャージャーで加給する5.2LのV8エンジンを搭載し、760psを発生させる、史上最もパワフルなフォード。モータースポーツ直結のスーパーカー、フォードGTですら655psだったのに。

リチウムイオン電池で走るSUVにマスタングの名前を与えたフォードだが、今後も究極のマッスルカーを生み出すという、フォードなりの表現なのだろう。ガソリンスタンドに頼ってマスタングを走らせる時代も、もう少しは続くようだ。

フォード・シェルビー・マスタングGT500
フォード・シェルビー・マスタングGT500

アメリカ市場では、ビック3がパワー戦争を繰り広げている。シボレーからはカマロZL1が登場し、ダッジからは797psのチャレンジャーSRTヘルキャット・レッドアイが登場。フォードも遅れを取るわけにはいかない。

760psのマスタングGT500のパワーは、7速ダブルクラッチ・オートマティック(DCT)を介して後輪を駆動。マニュアル・トランスミッションは選べない。もし6速MTにこだわるなら、より清楚な526psのGT350かGT350Rとなる。

7速DCTを標準装備とすることで、0-96km/h加速3.3秒というフォードの主張を、理想的な条件でなら実際に再現することができる。フロントエンジン・リアドライブのクルマとしては信じられないほど鋭い加速だ。

最高速度は289km/hに制限されるが、それでも充分に速い。2014年に登場したGT500は、パワーで劣っても321km/hだったから、実力は遥かに上だろう。

今までで最もウルサイと思えるノイズ

GT500には、スプリングやダンパー、アンチロールバーなどが専用品となるサスペンションが与えられる。GT350Rと比較すると、スーパーチャージャーの追加とトランスミッションの変更で212kgも車重が増えており、その対策でもある。

ブレーキはディスクの直径が420mmもある強力なもので、フォード製ロードカーとしては最大径だという。それを収めるために、アルミホイールは20インチとなる。

フォード・シェルビー・マスタングGT500
フォード・シェルビー・マスタングGT500

走らせてみるが、完全に正気じゃない。しかし、オーバーパワーのマッスルカー的な想像とは異なる。

4本出しのマフラーのエグゾーストノートも凄い。4段階のうち最も騒々しい設定では、筆者が運転したクルマの中で最もうるさい公認のロードカーなのではないだろうか。共振でダッシュボードからスイッチが外れるのでは、と心配してしまう。

加速も、スペック通りに激しい。変速のたびにエンジンから悲鳴が響いてくることも、そう感じさせる理由だろう。あまりにも暴力的な体験で、クルマが誰かに激しく怒りを感じているようだ。

だが実際はそんなこともなく、ストレートでのシェルビー・マスタングGT500は、信じられないほどに良い。トラクションは強力で、路面の状態がよく前方が空いていれば、2速でもすべてのパワーを使えるほど。畏敬を感じつつも、ドライバーは笑顔になってしまう。

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