【マツダがベンツを?】新車開発の裏側 自動車メーカーのおもしろ実験&研究 4選

公開 : 2021.05.13 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

自動車メーカーはいいクルマを作るために日々研究をおこなっています。今回は意外な実験や研究を紹介します。

「いいクルマ」を作るための意外な基礎研究

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

新車は数年間の開発を経て市販されるが、その裏側には「ライバルやベンチマークのクルマは購入して徹底的に解析する」、「初期の走行テスト車両は手作りに近い」など、クルマ好きにとって興味深い話がいくつも存在する。

今回は、そんな新車開発の裏側に焦点を当ててみよう。

トヨタ・ミライ(コンセプトモデル)
トヨタ・ミライ(コンセプトモデル)

とはいっても、ここで紹介するのは一般的な車両の開発プロセスではなく、「さらにいいクルマ」を作るための基礎研究に関して。どれも筆者がメーカーの開発者から聞いて、「そんなことまでやっているのか」と意外に感じたことだ。

ライバルやベンチマークとなるクルマを分析

これは一般的に言われていることなので「意外」ではないかもしれないが、ライバル車研究はやはり欠かせないようだ。

かつて、日本車がなかなか欧州車に追いつけなかった頃の日本メーカーは、定期的に欧州メーカーのクルマを完全に分解して構造などを解析していた。

マツダ3(テストコースでの走行)
マツダ3(テストコースでの走行)

とあるメーカーのエンジニアOBいわく「外せる部品はネジ単位まですべて外して、徹底的にバラバラにした。見えない部分の構造から考え方の違いを学ぶことも多かった」という。

分解したクルマは元通りに組み立てなおすこともあるそうだが前出のエンジニアOBによると「組み立てなおしても元の乗り味には戻らない」そうだ。

逆に欧州の自動車メーカーが日本や韓国、そして中国のクルマを分析/研究することもある。

とあるドイツメーカーが、同社として初めてのFFモデルを開発している時の話。そのメーカーのテストコースにおいて、当時世界最良のハンドリングを持つと思われた某日本メーカーのとあるFF車が驚くほど大量に置かれているのが目撃されたことがある。

FF車のハンドリングを作り込むにあたりベンチマークとされ、走りや構造を分析されたのだろう。

また、画期的な技術を搭載した市販車はライバルメーカーにとって喉から手が出るほど欲しい研究対象となる。

しかし、そのクルマの流通方法が「リース販売のみ」の場合はその車両をライバルメーカーは購入できないこともあり、地団太を踏むこととなる。

名車をリフレッシュ 「味」を探る

自動車メーカーが解析するベンチマーク車は、最新モデルだけに限らない。

有名な話なので具体的に描くが、たとえばマツダの開発部門は数年前、「W124」と呼ばれる古いメルデス・ベンツ「Eクラス」を購入して研究した。

メルセデス・ベンツW124
メルセデス・ベンツW124

1985年~1995年に販売された同モデルは、メルデス・ベンツらしさが強く残る最後の世代であると同時に、クルマとして理想が詰まっているといわれる名車だ。

マツダは購入したW124を徹底的にリフレッシュ。

とくにサスペンションの部品は可能な限り新品へと交換して「新車時の味」に近づけ、開発部隊が走りの「味」について「何がいいのか」、「どうしていいのか? 」を探ったのである。

コーナリングにおける挙動などを徹底的に分析し、ドライバーや乗員が安心できて心地いいロール感やハンドリングを研究したという。

マツダのクルマはハンドリングの評価が高いが、そういった地道な研究が走りのレベル向上に繋がっているのだ。

かつて筆者はマツダの操安系のエンジニアから「新旧問わず、乗り味を勉強すべきクルマがあればぜひ教えて欲しい」と尋ねられたこともある。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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