ウェルズ・ヴェルティージ 試作車へ試乗 フォード製2.0L NAをミドシップ 後編

公開 : 2021.11.16 08:26

新しい英国ブランドによる、新しいスポーツカーが誕生。量産間際の試作車へ、英国編集部が試乗しました。

細部まで拘りを感じるパッケージング

執筆:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ロビン・ウェルズ氏とロビン・ホール氏という2人が開発中の小さなスポーツカー、ウェルズ・ヴェルティージ。フロントピラーは、量産モデルのように太い。フロントガラスが、頑丈なロールバーで支えられているためだ。

前方視界はとても良く、ジャガーDタイプの運転席からの眺めにも似ている。ボンネットからフェンダーの両端へカーブが伸びる。リアウインドウは小さいが、エンジンカバー後端のリップスポイラー越しに、不満ない視界を得られる。ボディ感覚も掴みやすい。

ウェルズ・ヴェルティージ・プロトタイプ(英国仕様)
ウェルズ・ヴェルティージ・プロトタイプ(英国仕様)

小柄なボディでも、エンジンの後ろ側に206Lという、それなりの荷室がある。燃料タンクの容量は50Lで、給油口は左右に付いている。見た目も良いし、便利だからだという。一度の給油で640kmほどは走れる計算らしい。

驚くことに、フルサイズのスペアタイヤも積んでいる。ウェルズが重視した要件の1つだった。遠出先で交換したタイヤを、クルマに積んで持ち帰ることができるためだ。

車内のスイッチ類の作りも、シンプルながら良い。シフトレバーは、アフリカ産だというマホガニー材。空気がこもりがちな小さなクルマにはありがたい、フロントガラスのヒーターも付いている。

ダッシュボードの上部にはアルカンターラが張られ、映り込みを防いでいる。中央には、ナビとオーディオ用の、7.0インチ・タッチモニターが据えられている。

ロータス・エリーゼのように軽い

4気筒エンジンはすぐに始動した。このサイズのミドシップとしては、エンジン音が遠くから聞こえるが、ダブルスキンのバルクヘッドが備わっているためだ。

ホールのチームが手作業で仕上げるステンレス・エグゾーストは、アイドリング状態でもサウンドがスポーティ。だが、共鳴するような不要な音は発しない。中回転域で低音域が強く出るようだが、これは解消に向けて改良を続けているという。

ウェルズ・ヴェルティージ・プロトタイプ(英国仕様)
ウェルズ・ヴェルティージ・プロトタイプ(英国仕様)

クラッチはボディの大きさからすると重たいが、ストロークは丁度良い。ギアをつないで発進させると、バーティジの軽さがすぐにわかる。ロータス・エリーゼのようだ。

シフトレバーは、センターコンソールの高い位置から伸びている。シンプルなリンケージで、直接トランスミッションと結ばれている。レバーのストロークはショート。軽快に次々と変速を決めたくなる。

ただし、センターコンソールの位置の高さには、少し慣れも必要かもしれない。レーシングカーのような、包まれた感じはあるけれど。

ステアリングホイールと、3枚のペダルとの直線的なレイアウトも、ウェルズが拘ったことの1つ。ドライビングポジションは筆者にもフィットし、洗練された量産車と同じくらい運転しやすい。

現代のターボチャージド・エンジンのように、低回転域からパワーがみなぎることはないが、自然吸気の2.0Lエンジンは充分パワフル。素直に回転し、粘り強い。6速でのギア比は、1000rpm当たり41km/hほど。2000rpm以下からでも加速していける。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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