ヴォワザンC27 エアロスポーツ 壮観なアールデコ・スタイル 1台限りのクーペ 前編

公開 : 2021.12.18 07:05

航空機メーカーとして創業したヴォワザンが残した、希少なクルマの1台がC27。英国編集部がご紹介します。

ヴォワザンの革新的で個性的な自動車

見事なアールデコ・デザインのツートーン・ボディ。目隠しで運転席に座らされても、壮観な内装生地とダッシュボードを目にすれば、ヴォワザンに乗っていると気付きそうだ。

フランスの発明家、ガブリエル・ヴォワザン氏が残した革新的で個性的な自動車は、スタイリングだけではない。ステアリングホイールのホーン用レバーや、助手席側のヒューズ・ホルダーまで、特徴的なディティールにも事欠かない。

ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)
ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)

1934年に発表されたC27 エアロスポーツにも、多くの発明が含まれている。特許取得してあるものも少なくない。

フロントガラスはフレームレス。ガラスに穴が開けられ、ボルトで固定されている。後方へスライドするルーフを開くと、四角く切り取られた空が頭上に広がる。

艷やかな黒で仕上げられたダッシュボードには、ヒューズ・ホルダーのほかにノブやスイッチ、イエーガー社製のメーターが整然と並ぶ。足もとのペダルへ刻印されたガブリエル・ヴォワザン氏のイニシャル、GV以外、ブランド名を示すロゴはない。

細身のボンネットの先には、垂直に伸びた翼があしらわれている。ヴォワザンを象徴するマスコットだ。とある依頼主から1921年に要望を受け、アルミニウムの端材で急ごしらえしたのが起源だという逸話がある。

華やかなインテリアに包まれると、動力性能や操縦性にも期待が高まる。ブガッティに匹敵するスポーツカーだったのだろうか。あるいはモーターショーを飾る、ショーカー的要素が強かったのだろうか。

航空機で培った経験が活きるボディ

スターターのボタンを押し、3.0L直列6気筒エンジンを始動させる。エンジン音は小さく、特に興奮を誘うノイズではない。3バルブ構造を採用したエンジンが、白い排気ガスを後方に広げる。

複雑な構造の6気筒エンジンは、パワーやトルクを優先していない。静かな回転音と燃費効率を求めている。そのかわり、シャシーとボディは軽量。航空機の生産で培った経験が活きている。

ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)
ヴォワザンC27 エアロスポーツ(1934年)

長いシフトレバーが、フロアから姿を見せるトランスミッションから伸びる。1速から2速のレシオはショート。ステアリングコラムには、3速と4速に相当する2つのオーバードライブのスイッチが付いている。クラッチペダルは軽い。

走り始めると、排気ガスの白い濁りはすぐに消えた。エンジン音はさらに静かになり、極めて滑らかに回転を始める。

ステアリングラックはスクリュー&ナット式と呼ばれるタイプ。戦前のモデルとしては比較的軽く、素早くタイヤの向きが変わる。小回りも効く。ブレーキは前後ともドラムで、オリジナルのサーボでアシストされる。

筆者が特に印象深く感じたのは、ルーフを後方にスライドさせても保たれる剛性感。ボディが路面の影響で振動する素振りもなく、8点で強固に固定されるドアもきしまない。

フロントアスクルは鍛造。リジッドアスクルのリアは、当時らしい乗り心地を生んでいるが、サスペンションは油圧式のショックアブソーバーを備える。ノブを回して、減衰力の調整もできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ミック・ウォルシュ

    Mick Walsh

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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