最新高級EV対決 前編 電動化時代の旗艦モデル ドイツの双璧 キャビンは未来派と合理派に二極化

公開 : 2022.02.19 13:45

メルセデスとBMWのフラッグシップEVを比較試乗。セダンとSUVと、それぞれ違うフォーマットではありますが、いずれも既存のEVにはなかったような高級感と航続距離を誇る最上位モデル。まずは内外装をチェックします。

自動車業界激動の10年

自動車業界において、10年というのはとくに長い年月ではない。これくらいがモデルチェンジのサイクルだというクルマもある。トレンドが切り替わったり、セグメントをリードするモデルが入れ替わったりもするだろう。

10年間のうちには、さまざまな出来事が起きるものだ。しかし自動車業界における直近10年は、地質時代が切り替わるくらいの混乱と変動をみた。テスラモデルSが登場したのは2012年で、その3年後に採択されたパリ協定は、あのドナルド・トランプの率いたアメリカが離脱し一時は先行きが危ぶまれたが、大統領交代とともに事態は収束し、内燃機関に引導を渡そうとしている。

テスラ・モデルSの登場から10年。自動車業界激動の中で、既存メーカーは新世代の高級車像を提示するまでになった。
テスラ・モデルSの登場から10年。自動車業界激動の中で、既存メーカーは新世代の高級車像を提示するまでになった。

10年前には、エンジニアたちを排ガス不正に駆り立てたユーロ6規制も存在しなかった。ススやNOxを撒き散らすディーゼルが、欧州では人気を得ていたころだ。

テスラ・ロードスターは例外として、本格量産EVは、世界的にみても3車種しかなかった。日産リーフ三菱i−MiEV、そしてルノー・フルーエンスZEだ。欧州市場全体では、それらすべてを合わせても8000台ほどしか売れていなかった。2011年に破綻したサーブでさえ、それ以上の販売台数があったという数字だ。

そのころに比べれば、タンカーの稼働率は低くなった。ディーゼルゲートやブレグジット、世界的不況が発生し、英国は2030年までに内燃機関を廃止すると宣言した。そして、世界的なパンデミックが発生し、ふたたびの不況や半導体不足に見舞われている。次から次へと新たな危機に襲われている状況だ。

高級ブランドの最上級EV

しかし、これほど不確定なきっかけはそうそうやってこない。2012年当時、10年後にこれほど多くの自動車メーカーが完全電動化への移行を宣言することになると予想できたひとがどれほどいただろうか。また、欧州の高級車市場で中心的な存在の2社が電動化を進め、ゼロエミッションのフラッグシップを神輿に担ぎ上げることになろうとは、想像すらできなかったのではないだろうか。

大きな変化は、自動車市場の頂点にもたらされた。20世紀を勝ち抜いた高級車メーカーの雄たちが送り出した、高級車のサステイナブルな未来が、いまわれわれの面前にある。完全電動車のメルセデス・ベンツEQSBMW iXだ。

ルックスはどちらもかなり個性的というか、アクが強いというか。それだけに、新しいもの感は強く出ている。
ルックスはどちらもかなり個性的というか、アクが強いというか。それだけに、新しいもの感は強く出ている。

ここで読者諸兄に質問。巨大なポテトと、怒り顔の半水棲齧歯類(凶暴そうなカピバラといったところか)、どちらがお好みだろうか。そう尋ねたなら、どちらもお断り、という答えが返ってきそうだが。そんな冗談はさておき、われわれはこの2台のEVのうち、どちらを選ぶべきか、これからじっくり検証していく。洗練性も扱いやすさも最上級で、もっとも納得できるEVを手に入れ、モダンでサステイナブルな、魅力あふれる自動車生活を満喫しようとしている幸運な人間になったつもりで話を進めるので、そのつもりでお読みいただきたい。

もしも、まだその世界に足を踏み入れていないなら、決断すべきは今なのか。2台のEVで冬の二日間ほどを過ごして、現実的な使い方をした場合のドライビングや充電、積載性や快適性を、市街地や混み合ったA級道路、カントリーロードなどあちこちで試し、その答えを端緒なりとも見つけたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター

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