最新高級EV対決 後編 航続距離は1モーターのメルセデスが有利 乗り心地や運動性能はBMWが上

公開 : 2022.02.19 13:46

メルセデスとBMWのフラッグシップEVを比較試乗。セダンとSUV、1モーターと2モーターという、明確な違いのある2台、航続距離や斬新さで後れをとりつつも、運動性や快適性など、総合的に勝るのはBMWのほうでした。

大きな出力差と小さな重量差

では、走らせるとどうか。いっぽうはセダン、もういっぽうは背が高いSUVなのだが、重量差は105kgしかない。重いのはBMWのほうで、2.5tに迫ろうという勢いだ。

どちらもバッテリーの実用容量は100kWをわずかながら上回り、DC急速充電は最大200kW。異種の金属素材をミックスした新設計のEV専用プラットフォームを用い、四輪アダプティブエアサスペンションと四輪操舵を備える点も共通している。

1モーターのEQSは、2モーターのiXより105kg軽く、公称航続距離は100kmほど長いが、出力は189ps低い。
1モーターのEQSは、2モーターのiXより105kg軽く、公称航続距離は100kmほど長いが、出力は189ps低い。

ここまではいい勝負だ。しかし、メルセデスが用意した試乗車はエントリーレベルのグレードで、モーターは1基のみ、出力は334psの後輪駆動。対するBMWは中間グレードの2モーターで、523psの4WD、しかもSUVである。

シュトゥットガルトへ10万ポンド(約1550万円)送金したら、この2台のEVのうちで車高が低く、スマートで、遅いが長く走れるほうが手元に届く。メルセデスの公称データでは、航続距離は仕様によるものの最大729km。これは、たしかにインパクトのある数字だ。

航続距離には大きな開きが

気温が10℃を下回るテスト時のコンディションと、市街地でもそれ以外でもやや極端な使い方をした影響で、450+としては上位仕様となるテスト車のトリップコンピューターは、563〜612km程度の走行可能距離を示した。これがもっと温暖な気候で、ホイールサイズが小さく、もっと一般的なツーリングのように巡航したなら、必要とあれば640km以上の航続距離を実現できるのも可能だということは想像に難くない。高速道路をハイペースで飛ばさなければ、コンディションや効率への配慮はしなくてもそうなるだろう。

しかし、そうはいっても、距離を気にして休憩を取る必要のないEVを走らせたのは、これがはじめてだ。それもテスト施設での話ではなく、公道上で、である。

現実的な航続距離では、1モーターのメルセデスが150km近く有利だ。もっとも、BMWでも400km以上は余裕で走るのだが。
現実的な航続距離では、1モーターのメルセデスが150km近く有利だ。もっとも、BMWでも400km以上は余裕で走るのだが。

対するBMWは、ほぼすべての点で上を行く。唯一の例外は、おそらくもっとも心配するところ。同じ状況での現実的な航続距離は、426〜467kmだった。室内の広さや開放感はiXが勝り、荷室の使い勝手もわずかながら上だ。その差はそれほど大きくないが、iXは後席を倒して荷室容量を拡大し、よりかさばる荷物を積むこともできる。

ロンドンタクシー並みに効く小回り

EQSには、高級EVが本当に必要な、手に入れやすいパフォーマンスをすべて備えている。その前では、ディーゼルのSクラスがどうしようもなくレスポンスが悪くて遅く感じられる。いかなるときでもすばらしく、確実で、リニアなドライバビリティをみせるのだ。

とはいえ、iXはそれに輪をかけて速い。同じ10万ポンドで手に入る高級SUVは洗練されリラックスできるクルマでもある。搭載される励起モーターは、EQS以上にレスポンスがいい印象で、速度が上がってもスタミナがある。

EQSはサルーンのようでいて、実質的には大きなリアハッチを持つ5ドアだ。それでも、後席はSクラス並みに快適な空間だった。
EQSはサルーンのようでいて、実質的には大きなリアハッチを持つ5ドアだ。それでも、後席はSクラス並みに快適な空間だった。

四輪操舵により、どちらのクルマも低速でのハンドリングは変化するが、それがより顕著なのはEQSのほうだ。このメルセデスの5.2m級サルーンは、後輪が前輪と逆位相に最大10°切れる。ロンドンタクシーのような小回りが効き、市街地でアペックスに張り付くのも、タイトなラウンドアバウトや狭い駐車スペースで取り回すのも驚くほど楽だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター

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