時代の最高速モデル 100年を振り返る 1920年代 ヴォグゾール30-98 OEタイプ 162.0km/h

公開 : 2022.04.16 07:05

クルマの性能を端的に表す指標の1つ、最高速度。過去100年間を振り返り、各年代の最速モデルをご紹介します。

その時代における最高峰の技術

各メーカーがしのぎを削ってきた、100年以上に及ぶ自動車の開発競争。端的に性能を示し、販売に大きな影響力を与えてきた数字の1つが、最高速度だ。

近年は、コンパクトカーでも高速道路の制限速度を軽く超えられる能力を持っている。購入動機として、最高速度が優先される可能性は少ないかもしれない。

時代の最高速マシン 100年を振り返る 1920年代から2010年代まで
時代の最高速マシン 100年を振り返る 1920年代から2010年代まで

それでもスポーツカーにとっては、重要な指標の1つであることに変わりはない。サーキットやドイツ・アウトバーンの一部の区間でしか、その速さを体験できないとしても。

今回は過去100年の間に英国で正規販売された最速モデルを、10年区切りでご紹介したいと思う。レーシングカーではなく公道を走れるクルマとして、ある程度の日常利用も前提としながら、より高いスピードを追い求めた傑作たちだ。

速く走るには、より強力で安全で、空力にも優れ、制動力や操縦性にも秀でている必要がある。つまり、その時代における最高峰の技術が与えられているといっていい。

2030年代には、殆どの自動車が電気で走ることになる。最高速度の更新は果たされるだろうか。過去のモデルと同様に比較できる時代は、これが最後かもしれない。

1つの世紀を締めくくる、節目のような企画でもある。内燃エンジンの自動車が発明されてから130年以上、動力源として進化してきたメカニズムを称えることにもつながる。

4気筒から16気筒、自然吸気からターボチャージャーまで、形式は様々。1920年代から10年ごとに、その軌跡を確かめてみたい。

協力:エブリマン・レーシング

162.0km/hのヴォグゾール30-98 OEタイプ

100年前の英国では、時速100マイル(160.9km/h)を超える量産車の開発が、1つの偉業になっていた。レーシングカーはブルックランズ・サーキットなどで達成していたが、公道走行は前提にない、ワイルドでシンプルなマシンに過ぎなかった。

人間が快適に乗れるボディを備え、ナンバープレートを取得したクルマで同等の速さを実現するには、別次元の難しさがあった。そこへいち早く名を刻んだのが、現在は英国オペルとして知られるヴォグゾール社だ。

ヴォグゾール30-98 OEタイプ(1923〜1927年/英国仕様)
ヴォグゾール30-98 OEタイプ(1923〜1927年/英国仕様)

当時のヴォグゾールは、高性能技術の最前線を突き進んでいた。1911年には英国初の量産スポーツカーとして、C10 プリンス・ヘンリーを発売するほど。

その技術力に目をつけ、ヒルクライム・レースを有利に戦える公道用モデルの開発を依頼したのが、実業家のジョセフ・ヒギンソン氏。技術者のローレンス・ポメロイ氏はA10エンジンを改良し、可能な限り軽量な駆動系とボディを与えたクルマを生み出した。

それが、ヴォグゾール30-98 Eタイプ。第一次世界大戦以前としては破格といえる、最高速度136.8km/hを実現し、1913年にヒギンソンへ納車された。

彼は早速、シェルズリー・ウォルシュというイベントへ参戦。8年間も破られることのない、新記録を樹立した。だが、オーバーヘッド・バルブのエンジンには、まだポテンシャルが残されていた。

ちなみに30-98というモデル名は、30が1000rpmでの英国馬力(bhp)で、98は最高出力を示していたようだ。ヴォグゾールの歴史がまとめられた、自社発行の本にその旨が書かれている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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