ポルシェの魅力を1つに凝縮 ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタードへ試乗 後編

公開 : 2022.05.13 08:26  更新 : 2022.05.13 09:47

空冷フラット6を積んだ993型911カブリオレを、徹底的にレストモッド。見事なバランスに、英国編集部は惹き込まれたようです。

従来以上にポルシェへ包まれる

ガンザーワークス社のスタッフがトラックに試乗車を積み、筆者が後を追う。カリフォルニア郊外のショッピングセンターの駐車場で、993 スピードスター・リマスタードが降ろされる。近くの丘陵地帯には、素晴らしいドライビング・ルートが伸びている。

美しい佇まいの993 スピードスターの着座位置は、標準の993型ポルシェ911 カブリオレより約50mm低い。従来以上に、ポルシェへ包まれているような印象を受ける。

ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)
ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)

ステアリングホイールは小径で円形。無駄な装飾は一切なく、カーボンファイバー製でいかにも軽そうだ。リムはアルカンターラで巻かれている。

3枚のペダルは重めなものの、感触はすべて調和が取れている。シフトレバーのストロークは長いが、動きは滑らかで正確。操縦系のすべてがリニアだ。ドライビングポジションにも、非の打ち所がない。

同社の創業者、ピーター・ナム氏によれば、小回りは驚くほど効かないとのこと。フロントには30mmのノーズリフト機能が付いている。速度が上昇しても、自動でキャンセルにはならないという。だが、酷い乗り心地でオンのままだと気付かされた。

ダッシュボードの下部に違和感なく納まったステレオ・ヘッドユニットは、アップル・カープレイにも対応している。ほかにも、パワーステアリングやエアコン、アンチロック・ブレーキなど、現代的なクルマとしての技術水準は網羅している。

感動的な体験を与えてくれるスポーツカー

ショッピングセンターの駐車場から、少し離れた高速道路を目指す。日常域でも扱いやすく、快適だということが理解できる。そこから丘陵地帯のワインディングへ足を進めると、感動的な体験が待っていた。

サスペンションには、コンフォートとスポーツという2モードが用意されている。スポーツ・モードは、一般道には硬すぎる。あえて、サーキット向きの特性に仕立ててある。

ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)
ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)

アクセルペダルの操作に対する反応は、鮮烈なほど鋭い。世界トップクラスのチューニングが施されたエンジンに、超軽量なシングルプレート・フライホイールが組み合わされ、回転は極めて鋭敏。高回転域の常用が、前提にある。

引っ張れば4速で200km/h前後に到達するが、2速と3速を切り替えて走るのが気持ちイイ。1速にシフトダウンすれば、胸のすくような音響体験も伴う。至極幸福な時間だ。

エグゾーストには、市街地を上品に走るためのバルブスイッチも備わっている。人影が少ない場所でバルブを開けば、フルボリュームを楽しめる。スピードスターだから、排気音もエンジン音も、より直接的に堪能できる。

993 スピードスターは、通常のコンバーチブルよりボディ剛性が高い。それでも硬いルーフが備わらないぶん、状況によってはシャシーの振動を抑えきれていない。筆者としては、993 クーペの方にも興味が湧いてくる。

そうとはいえ、素晴らしいスポーツカーであることに間違いはない。コーナーへの侵入は至ってシャープで、フロントタイヤの食い付きを確かめつつ、リアタイヤへ気を配る必要もない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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