世界最高峰の多様性 ランドローバー・レンジローバー D350 HSEへ試乗 最新5代目 後編

公開 : 2022.05.31 08:26

レンジローバーが新世代へモデルチェンジ。従来以上に能力の幅を広げたフラッグシップを、英国編集部が評価しました。

ボディもインテリアも価格に不足ない豪華さ

5代目へ進化したランドローバーレンジローバー。ボディもインテリアも、その価格に不足ない豪華さを漂わせている。塗装には艶の深みがあり、パネルの接合ラインも非常にタイト。レザーやウッドなど、インテリア素材は高級感に溢れている。

それでいて、シンプルな操作系は理解しやすく、日常的にも乗りやすい実用性が共存している。ダッシュボード中央には驚くほど高精細な13.1インチのタッチモニターが配され、多くの車載機能のインターフェイスとなっている。

ランドローバー・レンジローバー D350 HSE SWB(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー D350 HSE SWB(英国仕様)

アマゾン・アレクサがベースの音声操作機能も搭載。タッチモニターへ触れずに動かせる機能も多い。

心地良い運転席に身を委ね、最新の5代目を発進させると、いつものレンジローバーのように感じられる。ボディが大きく高く、車内が静かで、乗り心地は柔らかい。英国の一般道を相手にすると、幅も広い。

そして速い。D350 HSEの場合、0-100km/h加速を6.1秒でこなす。実際、その数字を信じれる勢いを体験させてくれる。ディーゼルターボは粘り強く、110km/hの高速走行を2000rpm以下の回転数で賄っていた。

洗練されたデザインと一致するように、動的能力も磨き込まれている。それを感じ取るのに、出発から5kmもいらない。

英国の様々な路面状況を走らせても、終始極めて落ち着いている。サスペンションはソフトだが、たるみはなく、しっかり抑制されている。160km/h近い追い越し車線でも、30km/h以下で渡る踏切でも、常に静かに優しくいなしてくれる。

毎秒100回可変するテレインレスポンス2

最新版のテレインレスポンス2は、必要に応じて毎秒100回の調整をシャシーに施す。レンジローバーが不安定になる様な場面は、ほぼないといって良い。ドライバーがエアサスペンションの硬さを調整する必要もない。実際、個別には選べない。

スポーツ・モードも備わらない。だが運転すれば、ランドローバーの技術者のチューニングが素晴らしいとわかる。従来以上に。

ランドローバー・レンジローバー SWB D350 HSE(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー SWB D350 HSE(英国仕様)

コーナリングにも深く感心する。重心位置の高いSUVの場合、左右へ急に向きの変わるS字コーナーの処理は難しいことが通例。レンジローバーには電圧48Vで稼働する、アクティブ・ロールコントロールが搭載され、見事にそれへ対処している。

GPSとマップ情報を頼りに、状況に応じてサスペンション・アームとアンチロールバーを結合・分離することが可能。快適な乗り心地を損なわず、ボディロールを最小限に抑えている。

ステアリングフィールも、SUVの中ではベスト。大きいレンジローバーのボディを、完璧な精度とダイレクトさで導ける。コーナーの途中に意地悪な起伏があっても、影響を受けたり姿勢が乱れるような素振りもなかった。

操舵感は軽く、後輪操舵システムも備え、小回りも驚くほど効く。最小回転直径は、フォルクスワーゲン・ゴルフ並みだという。ミラーを含めると2209mmもある全幅を、思わず忘れさせてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

世界最高峰の多様性 ランドローバー・レンジローバー D350 HSEへ試乗 最新5代目の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事