ジャガーF-タイプ V6S vs ポルシェ911タルガ4

公開 : 2014.07.29 23:50  更新 : 2017.05.29 19:33

2台の比較試乗とはいえども、私にとってはスポーツカーの頂上決戦のように思える。そう思うのは、恐らく私だけではないだろう。なぜか、それは、各メーカーが凌ぎを削るマーケティングによるものだろう。あるいは、コンバーチブルのスポーツカーがクーペ・ボディに比べて、昔ほど引けを取らなくなったからかもしれない。両方ともに、あくまで私の想像ではあるのだけれど。

F-タイプの場合、クーペ版が市場に投入されたのは記憶にあたらしい。そこで、だ。それ以前からあったコンバーチブル版は、相変わらずスポーツカーと定義づけることが出来るという向き、あるいはクーペに比べて ’劣っている’ と感じる向きのふた手に分かれるのではないだろうか。”まぁ乗ってみてください。50mも走らないうちに、その答えは明らかになりますよ” とジャガーの関係者は言う。”かつてのジャガーの面影はもうそこにはありません” とも。

大部分において、それは正しい。大部分において、ということはつまり、正しくない点もあるのだ。ではどこが正しくないのか。それは ”かつてのジャガーの面影はもうそこにない” と言う点だ。われわれは、この記事の写真に収まる、ダーク・ブルーのF-タイプを数年間に渡って長期テストを行ってきた。そして、思う。’質感’ という観点でこのクルマをみれば、往年のジャガーのそれを、いい意味で多分に受け継いでいるからだ。

例えばアルミニウム構造。こちらは(あなたが冷淡な視線を送ろうと、そうでなかろうと)XKの構造から多くを学んでいる。もちろんXKと比べると、肩幅は広く、背も低いし、オートマティックしか用意されていないのだけれど、油圧ステアリングや、動力性能などどれをとっても、F-タイプには往年のジャガー同様の熱い血が迸っているのである。言い換えるならば、このクルマは疑いようもなくスポーツカーなのだ。

ポルシェ911タルガに関しても、わたしがたくさんの人に聞く限り、皆純粋なスポーツカーだとみなしているようだ。ちなみに、タルガはソフト・トップをもつカブリオレよりも私の周りでは受けが良いとも感じている。

そして、タルガはクール(私はもう39歳なので、こんな表現をするのは少し恥ずかしいのだが)だと思う。往年のタルガがそうであったように、カブリオレの形よりクールだと思うのだ。もしかすると反対意見があるかもしれないが、少なくとも私はそう思う。それに、つい最近のタルガといえば、ガラス・ルーフがスライドするだけのものだったけれど、991タルガの場合、’あの’ 銀色のアルミ製ロール・フープが復活しているのだから。

このルーフが開閉するさまをみれば、そのロール・フープだって外観上のハッタリではあるし、開閉機構だってカブリオレのそれと基本的には一緒なのだけど、それでもやはり往年のタルガの意匠を復刻したことに拍手を送りたい。

ルーフを開けるには、リア・ガラスが一度、大きく上にポップ・アップする。その後に、ファブリック地の幌が後ろに滑り込み、いちど浮き上がったリア・ガラスが元の位置に降りる事によって、幌をすっぽり飲みこむのだ。この動作を見ているだけでもうっとりとしてしまうのだと、ポルシェのエンジニアは言う。わたしもそう思う。

ただし、この光景を見ることは出来るのは、クルマが静止した状態で、かつ開閉に要する20秒間ずっと待っていなければならないのだ。それに重い、重すぎる。どれくらいかというと、既に重いカブリオレより40kgも重く、クーペに比べるとトータルで110kgも重いのだ。その上、この機構をおさめるには、4WDの911Sと同じ幅を要することも覚えていなければならない。

したがってタルガは ’4’ と ’4S’ (ちなみにテスト車は4)のみの設定となり、必然的にクーペのカレラよりもかなり重たくなっている。私の認識では、これはあまり好ましい事態とは言えない。短絡的な見方かもしれないけれど、これが私の見識といったところだ。

一方のジャガーは、幌の開閉を行う間、あなたをそう長く待たせることはない。48km/h以下であれば動作可能というのだから、これまたかなり印象は良い。

自宅玄関のドアノブをひねる時のように、何の気なしに幌を開けるボタンを押し、アクセルをグイと踏み込む。後方のエグゾースト・パイプから盛大なバックファイヤーの音を聴く。快感を得ることがこれほど簡単な事だったのだろうかと思えるくらいだ。残念なことに、タルガの後方からは、そのようなスリリングな音は聴こえてこない。

数字の面も見ていくと、タルガの350psというピーク・パワーを得られるのは、7400rpmでのことだ。その反面、F-タイプは380psを6500rpmの段階で叩き出す。読者諸兄のなかには、”ポルシェにはPDKという最終兵器があるぞ” とおっしゃる方もいるかもしれないが、PDKを選択しようと思えば£86,377(1,279万円)の車両価格に、さらに£2,298(34万円)を上乗せしなければならない。

もちろん、今の911の世代では、PDKもかなり熟成されている。シフト・アップはほとんどその継ぎ目を感じることはないし、シフト・ダウンも迅速で、回転の合わせ方も絶妙だ。

その点、F-タイプのもつ8速トルコンATだって負けてはいないのだが、やはり市街地を走るような速度では、シフト・アップ時にはわずかにギクシャクする。しかし、F-タイプの場合、車両価格は£67,535(1,000万円)である。そう考えれば、安いと思ったとしても不思議な話ではない。

同時にこのテストが、同価格帯のクルマだけを寄せ集めた、よくある比較テストだけではないこともお分かりいただけるだろう。

タルガを槍玉に挙げたとしても、そもそもタルガにはライバルと呼べる相手がいないというのも事実だ。 タルガとF-タイプがほとんど互角なのは、スペック上どちらも高いレベルにあるのならば、仕方はない。

しかし2台のうち、最低地上高の高いタルガは高価な分、それを正当化することができる。一言で言うなら、それは実用性だ。確かに何かの生物の退化のように、リア・シートは微かにしか残されていないのだけれど、それでも園児の送り迎えに使うことや、終電を乗り過ごした仲間を後ろに載せて帰ることもできる。

タルガの場合は、フロントにも荷物を積むことができるのだが、F-タイプには後方にしか荷物らしい荷物を積める場所はないし、仮に積もうと思ったとしても浅く小さいトランクに工夫をこらして荷物を入れていかなければならない。それにフロント・シートもタルガほど後方にスライドさせることはできない。

これらの違いは、メカニカル・レイアウトによるものが大きい。フロント・エンジン対リア・エンジン、後者の場合、パッケージの観点から見ると、かなり有利になるのだ。更にもう一つ、構造に用いる材質の違いも大きい。ジャガーの場合はアルミニウム、ポルシェは鋼鉄の混ざった金属シェル。確かにアルミは軽いのだけれど、その分それなりの剛性を得ようと思えば、かなり量が必要となるのだ。したがって場所を取ってしまうのである。

両者共通なのは、やはり楽しさだ。タルガの場合、標準のカレラに比べて重量が増しているにも関わらず、鋭く、素早く、正確なのである。いかにもドイツ的な直線性の高さと、ステアリングの正確さの融合は見事で、次のコーナーが待ち遠しくなる。

ただしF-タイプのほうが、どちらかと言うと落ち着いている。もちろんスポーツカーなのだから、ふわふわと柔らかいわけではないが、市街地での乗り心地ははタルガよりも良い。しかしスピードを上げれば、タルガに比べてハーシュネスを感じる頻度は高くなり、敏捷性もタルガに一歩譲る。その反面、ハンドリング・バランスはもはや芸術的な域に達しているし、パワーの供給も力強く、素早い。

もちろんポルシェのエンジンだって素晴らしい。事実、エンジンは絹のようになめらかで、レスポンスもかなり優秀ではあるのだが、最高出力を得るにはF-タイプの回転域よりももっと回してやる必要があるのが惜しい点だ。

どちらがいいか、どちらが優れるか。それは正直に申し上げると、あなた次第だ。ポルシェのほうが懐が深く、エンジンに対する満足度も高い。ジャガーには華やかさがあり、エグゾースト・ノートの演出も見事だ。それに古典的とも言えるファッションを取り入れた点にも面白さがある。

要するにどちらとも優秀なのだ。しかし ’今回は引き分けです’ なんていう結論を書くと、ここまで読んで下さったAUTOCARフリークに合わせる顔がない。では私なりの結論。あと12ヶ月、この2台の比較テストを続けて良いと言われれば、私はF-タイプとより長い時間を過ごすだろう。それは、F-タイプのほうがリラックスできるし、能力を引き出し、スリルを感じることがタルガよりも容易にできるからだ。だけれども、荷室の小ささ対しては、終始文句を言い続けることになりそうだ。

(マット・プライヤー)

ジャガーF-タイプ V6S

価格 67,500ポンド(1,000万円)
最高速度 275km/h
0-100km/h加速 4.9秒
燃費 10.8km/ℓ
CO2排出量 213g/km
乾燥重量 1614kg
エンジン V型6気筒2995ccスーパーチャージャー
最高出力 375bhp/6500rpm
最大トルク 46.9kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス 8速オートマティック

ポルシェ911タルガ4

価格 88,765ポンド(1,540万円)
最高速度 280km/h
0-100km/h加速 5.0秒
燃費 11.5km/l
CO2排出量 204g/km
乾燥重量 1560kg
エンジン 水平対向6気筒3436cc
最高出力 350ps/7400rpm
最大トルク 39.8kg-m/5600rpm
ギアボックス 7速PDK

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