ジャガーF-タイプRクーペ

公開 : 2014.03.19 22:50　　更新 : 2017.05.29 18:38

■どんなクルマ?

待望久しいジャガーの新しいスポーツカー、F-タイプ・クーペの中でも最も強力なバージョンがF-タイプRクーペだ。現在、F-タイプ・クーペに用意されているエンジンは3つ。2基のV6とV8だ。ベースのF-タイプは3.0ℓV6スーパーチャージャーで340psを発揮。中間グレードのF-タイプSは同じく3.0ℓV6のスーパーチャージャーだがチューニングの高い380ps、そしてRは5.0ℓV8スーパーチャージャーで550psを発揮するエンジンを搭載する。このRに関してはコンバーチブルが495psであるのに対し、クーペには55psほど高いエンジンが搭載されていることになる。

クーペ・ボディで重要なことは、コンバーチブルよりも80%近く捻れ剛性がアップされているということだ。これはアルミニウム製のルーフの採用によって、そのボディを本当のモノコック構造にしているということだ。この剛性のアップは、F-タイプ・クーペのドライバビリティを向上させることに寄与している。実際、フロントとリアのスプリング・レートは、コンバーチブルよりも上がっており、ダイナミックなパフォーマンスが上がっていることとなる。

従って、クーペはコンバーリブルよりもよりコントローラブルであり、より機敏であり、よりステアリング精度が上がっていることとなる。

サイズ的にも、フロント・エンジン・リア・ドライブというコンポーネンツ・レイアウトで見ても、それはBMW 3シリーズに近い。実際、このF-タイプをベースしたコンパクト・サルーン、XEは、3シリーズのライバルとしてリリースされる予定だ。

■どんな感じ?

実はこのF-タイプRクーペのプロトタイプをスティーブ・サトクリフがテスト・ドライブしている。その記事はこちらをご覧いただきたい。

実際に、300km/hのトップ・スピードと、4.0秒という0-100km/h加速を持つF-タイプRクーペは非常に速い。その5.0ℓスーパーチャージドV8ユニットの搭載と共に、20インチのホイールと、それに伴う大径のスティーブ・ブレーキも装備されている。ちなみに、パフォーマンス・タイヤとより軽いホイール、そしてカーボン・セラミック・ブレーキもオプションとして用意されているのだ。

例えトップ・スピードで走行していても、大きなテールゲートのスポイラーがリフトを抑えるので、安心してステアリングを握ることができる。

サーキットでは、そのトルクベクタリング・システムがアンダーステアを見事に押し殺していることがわかる。私の癖だが、早めにコーナーのエイペックスに近づくようなドライビングでも、しっかりとした立ち上がりを示してくれる。もしも本当にレーサーのようなドライビングをしないのであれば、ダイナミック・スタビリティ・モードをオンにしておけば、安定した走行が可能だ。ある程度のスピードであっても、軽いオーバーステアでコーナーを抜けてしまう。

もちろん、勇敢にも全ての電子制御をオフにするのであれば、雑誌のカメラマンが喜びそうな派手なドリフトを披露することも可能だ。

一方、60km/h程度で流してもいても、F-タイプRクーペは恐ろしくバランスがとれた状態で走行できる。テールは外側に向かおうとするきらいがあるが、それは非常に良くコントロールされているといえる。

■「買い」か?

ベース・モデルの£51,235(860万円)から大きくジャンプアップした£85,000(1430万円)という価格を、このF-タイプRクーペに支払うかどうかはあなたのジャッジにかかっている。しかし、仮にF-タイプRクーペを選んだとしても、失望を感じることはない。F-タイプは、どのモデルを選んだとしても、共通した素晴らしいクオリティがある。ドライビングを楽しみ、その美しいインテリアを楽しむことができるのだ。そして、そこには無理やりに調整するようなものは何もない。

クルマに対して、そういった信頼をおけるということは非常に珍しいことかもしれない。F-タイプ・クーペは、そういった意味で、単なるスポーツカーとしてだけでなく、ヒストリーに輝かしい名前を残すクルマとなるに違いない。

(スティーブ・クロプリー)