アルピナXB7試乗 B7に通じるアルピナの流儀+SUVのカジュアルさ

公開 : 2022.10.27 05:45

アルピナXB7 2022年モデルに試乗。アルピナB7にも通じるアルピナの流儀にSUVのカジュアルさを備えるモデルといえます。

いつもより存在感強め だが躍動的

自動車ブランドにはそれぞれ象徴的なイメージがある。

それは代表的なモデルのドライブフィールや構造、スタイリングといったものに紐づいていることが多い。

アルピナXB7
アルピナXB7    アルピナ

BMWアルピナの個人的なイメージは3シリーズのリムジン(4ドア)が基準になっている。

かつてドライブしたB3 3.2(E36)の引き締まりつつもしっとりとした、唯一無二の感覚。それこそBMWとも、Mとも違うアルピナの絶対的なイメージとして脳裏にある。

そんな固定観念の持ち主が、今回の超大物、XB7を咀嚼することは容易ではないのかもしれない。

外観はもちろん、しっかりとアルピナ化されている。

矢羽根のようなデコストライプとアルピナグリーンは分厚いボディの印象をシャープに変えている。

「ALPINA」の文字が浮き彫りになっているチンスポイラーの位置がリムジンのそれより高いため、いつもより存在感は強め。

ホイールはスポーク細さと長さが際立つ23インチが装着されているため、車高の高さ故のダルな感じを払しょくしている。

インテリアもアルピナ特有の世界観でまとめられている。

メインの内装材はホワイトのメリノレザーで、赤みを帯びたウッドもアルピナの定番。

ステアリング裏のパドルは今回初めて目にして驚いたのだが、「ALPINA」の文字が刻まれたアルミ鋳物(たぶん)だった。

ベースモデルのX7より明らかに上質で、しかし躍動的な走りのイメージにも事欠かない。走りにも期待せずにはいられない。

シャシーファスター お家芸は健在

見た目の雰囲気はしっかりアルピナだが、渋滞した街中を抜けていく今回の走りはじめは「おぉ、これぞアルピナ!」という感触がなかなか得られなかった。

視界が良く、ハンドリングもリニアなので、ボディの大きさはすぐに気にならなくなった。

アルピナXB7の力強さは本家X7 M50iを凌駕する。
アルピナXB7の力強さは本家X7 M50iを凌駕する。

後輪操舵は前進しているぶんにはその効能を感知しにくいのだが、これもハンドリングの完成度に貢献しているはず。

コーナーではボディが傾いてから曲がりはじめるのではなく、ステアリングを切るコブシとともに狙ったところに鼻先が入っていくイメージ。

それでいて幅広タイヤの角ばったショルダーによって強引に横Gが立ち上がる感触も皆無。

キャパシティの大きなタイヤでナチュラルな操舵感を表現する手法は、今なおブッフローエのお家芸だったのである。

エンジンは4.4LガソリンのV8ツインターボで、これはB5やB7とったモデルに搭載されているユニットと同一。

ベースはX7 M50iのパワーユニットとも一緒だが、アルピナのパワーとトルクは本家のそれを凌駕している。

高速道路の料金所から緩やかなカーブを抜け、加速しながら本線に合流する。

そんな一連の所作の中にアルピナXB7というクルマの本質が見えた気がした。

ディーゼルと比べればトルクのかかりかたは穏やかだが、それが抑制の利いたシャシーの性格に良くマッチしており、2まわりくらい小さくて軽いSUVをドライブしている気にさせてくれる。

パワーは増しても、アルピナらしい「シャシーファスター」の図式はちゃんと守られているのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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