これ以上が思い浮かばない BMWアルピナ D4 S グランクーペへ試乗 1つの集大成

公開 : 2023.01.13 08:25

歴史あるアルピナが仕上げた、極上の4シリーズ・グランクーペ。クラスの頂点にある完成度だと、英国編集部は評価します。

改善すべきところが思い浮かばない

ドイツの名門、アルピナが仕上げたD4 S グランクーペ。見た目以上に、その仕上がりは格別だ。

BMWの傘下に収まることが決まった同社は、近年ではG20型とG21型の3シリーズで実力を証明している。2022年には、G26型の4シリーズ・グランドツアラーがラインナップに加わった。

BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)
BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)

ボンネットに収まるのは、直列6気筒のガソリンターボかディーゼルターボ。右ハンドルの構成で、英国や日本での販売も始まっている。

D4 S グランクーペは、類稀な速さに良好な燃費、不足ない高級感、満ち足りた運転体験などを高次元で叶えている。高級車としての佇まいや合理性、望ましさなどを犠牲にすることなく。

少なくとも筆者にとっては、欧州のハイエンドブランドが半世紀以上に渡って追求してきた、集大成といえる域にあると感じる。これ以上、改善すべきところが思い浮かばない。

驚くほど速い高級サルーンというだけではない。感銘せずにはいられない、運転を堪能できるグランドツアラーでもある。

2040年の欧州では、目的地が200kmほど離れている場合、高速列車を移動手段とすることが一般化しているかもしれない。そんな時代が来ても、アルピナという有能な選択肢があったことを記憶に留めておきたいと強く思う。

失うであろうモノの大きさを実感する。バッテリーEV(BEV)には、優れた点が確かに多くある。しかし、D4 S グランクーペほど容易で快適に、楽しく長距離を移動できるモデルは登場するだろうか。

3.0L直6ツインターボは355psを達成

B4 グランクーペのスリークなボンネットの下に収まるのは、B3と同じ3.0Lの直列6気筒ツインターボ・ガソリンエンジン。他方、今回試乗したD4 Sが積むのは、D3 Sと同じ3.0L直列6気筒ツインターボ・ディーゼルとなる。

アルピナの手による改良と冷却性能の向上によって、最高出力はBMW M440dより1割ほど勝る355psを達成。最大トルクは74.2kg-mを得ている。

BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)
BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)

駆動方式は、トルクベクタリング機能付きの四輪駆動、xドライブが標準。トランスミッションは8速オートマティックのみ。サスペンションとステアリングにも独自のセットアップが施され、豪華なインテリアも特別仕立てとなる。

試乗車の場合は、アイボリー・ホワイトのエクステンデッド・メリノレザーが内装に施されていた。肌触りは素晴らしく、見た目も洗練されている。

ステアリングホイールはブラック。アルピナのトレードマークといえる、ブルーとグリーンのステッチが控えめに主張する。

欧州市場では、ディーゼルエンジン・モデルはアルピナの大きな収益源になっていた。しかし、排気ガス規制の強化やBEVへのシフトに伴い、ビジネス環境は大きく変化している。BMWとの関係を見直すきっかけにもなったはずだ。

規模の小さなアルピナにとって、投資すべきエンジン選びは小さな決断ではない。見誤ると、致命的なダメージを被りかねない。だが少なくとも、直列6気筒ユニットは間違いのないユニットといえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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