「とてつもない」有能ワゴン アルピナD3 S ツーリング 長期テスト(最終) ホームのドイツで極上体験

公開 : 2024.04.06 09:45

直列6気筒ディーゼルを搭載した高速ワゴンのD3 S 独立時代最後となる現行型 誉れ高いアルピナの実力を長期テストで検証

積算1万8003km 2025年から完全なBMW傘下へ

AUTOCAR英国編集部には、管理している車両へ誰が何日に乗ったのか、記入する表がある。スピード違反の反則金や、都市部などの通行料(通行税)の未払い請求が届く場合に備えて。

もちろん、アルピナD3 S ツーリングの欄には筆者の名前が多い。長期テストの担当者だから。最新のBMW 3シリーズをベースに、アルピナが仕上げた最新版はどれほど素晴らしいのか、時間をかけて確かめる必要があった。

アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

ただし、初めの頃だけだ。ここ最近は、あまりステアリングホイールを握れていなかった。社内で向けられる視線は熱く、同僚が予定を抑えてしまうことが多かったのだ。

アルピナは、2025年から完全なBMW傘下のブランドになる。経営者のボーベンジーペン家は、電動化をはじめとする自動車技術の革新や、厳しさを増す環境規制と安全規制を考慮し、メリットとデメリットを天秤にかけ、BMWからのアプローチに決断を下した。

2025年以降のアルピナがどのようなビジネスを展開するのか、まだ具体的な発表はない。現在のモデルと同水準で特別な仕上がりになるのなら、偉業といえる結果になるだろう。少なくない同僚が、今のアルピナに乗っておきたいと考えても、当然といえる。

ゴムの薄さを考えれば、乗り心地は想像以上

D3 S ツーリングの土台には、BMW 3シリーズ・ツーリング、M340dがある。アルピナ独自の技術で、3.0L直列6気筒エンジンは15ps増しの360psへ上昇。最大トルクは、74.2kg-mへ高められている。

トランスミッションは、トルクコンバーター式の8速オートマチック。四輪駆動で、確実なトラクションを得ている。

アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

英国価格は、素の状態で6万6000ポンド(約1247万円)だが、長期テスト車には複数のオプションが載り、8万8265ポンド(約1668万円)になっていた。ミドルサイズのステーションワゴンとしてはかなり高額だが、それを納得させる内容にはある。

追加装備の中でも、95ポンド(約1万8000円)するインテリアのガルバニック仕上げと、290ポンド(約5万5000円)のアルミ製シフトパドルはとても好ましい。クラシカルなマルチスポーク・アルミホイールは、3420ポンド(約64万6000円)する。

このホイールは20インチと大きく、タイヤの扁平率は30と、信じられないくらい薄い。この足が、特有のドライビング・キャラクターを生む要素の1つになっている。

サスペンション・スプリングは硬めで、姿勢制御はタイト。ゴムの薄さを考えれば、乗り心地は想像以上に優れている。それでも、アスファルトの剥がれた穴や、センターラインのキャッツアイを踏むと、厳しい衝撃が伝わってくるけれど。

筆者はうかつにも、路面へ出来た穴を、これまで2度も通過している。一方は、鍛造ホイールのリムに傷を与えるほど強烈だった。タイヤがバーストしなかったのは、奇跡かもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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