4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッド 後編

公開 : 2022.10.26 08:26

独自の経験と愛情で完成された極上の911

ハイスピードで連続するコーナーへ侵入し、頂点付近に峰があるような場面では、CHI001は瞬間的に暴れる。すぐに落ち着きを取り戻すけれど。苦もなく高速域へドライバーをいざなうものの、ベースが30年前の911だということを思い出させる。

最新の911なら、何事もなかったように通過するだろう。でも、筆者はCHI001の振る舞いも嫌いではない。むしろ、かなり好きだ。

セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)
セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)

ステアリングホイールのレシオは、もう少しクイックでも良いかもしれない。フラットにコーナーへ進入していくが、旋回中はオリジナルの964と同様に感触が若干悪化する場面も感取された。気になったのはその程度。

さて、これほど素晴らしい仕上がりのレストモッド964のお値段は、英国で38万ポンド(約6270万円)から。セオン・デザイン社としてはベーシックな内容での数字で、安くはない。しかし、カリフォルニアのシンガー社が手掛けるクラシック911よりは安い。

この半分の予算があれば、見事なコンディションの964型911 RSをクラシックカー市場で探すことも可能ではある。あるいは996型などの911 GT3を選べば、CHI001以上の動的能力を堪能することもできなくはない。

とはいえ、セオン・デザインの911にも強く惹かれる。そもそも、レストモッドはコストを直視した合理的なアイデアではない。ダークパープルのCHI001は、独自の経験と深い愛情によって仕上げられた、極上の911といえる。いうなれば、走る芸術作品なのだ。

セオン・デザイン911「CHI001」(南米仕様)のスペック

英国価格:38万ポンド(約6270万円)以上
全長:4245mm(オリジナル964型)
全幅:1660mm(オリジナル964型)
全高:1310mm(オリジナル964型)
最高速度:265km/h(予想)
0-100km/h加速:4.2秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1164kg
パワートレイン:水平対向6気筒4000cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:405ps/7100rpm
最大トルク:48.3kg-m/6100rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

4.0Lフラット6の走る芸術品 セオン・デザイン911へ試乗 964を徹底レストモッドの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

ポルシェの人気画像