【実際に購入レポート】ポルシェ・タイカンの長期テスト(11) 旅先における充電トラブル

公開 : 2022.11.14 14:25  更新 : 2022.11.14 14:25

AUTOCAR JAPANの笹本健次編集長のポルシェ・タイカン購入レポート。今回は、旅先で遭遇した充電トラブルをお伝えします。

充電計画を立てて

今回は、ポルシェ356ホリディのレポートの最後でも予告をした充電トラブルについて紹介したい。

私のもう1つの仕事は、山梨県甲府市にある常磐ホテルという旅館を経営することであるが、この仕事の場合は、常に、新設されたり、評判の高い施設を実際に体験し、自社に取り入れるという努力をしないとすぐにおいて行かれてしまうと思っている。

甲府から奈良井までは、どこにも立ち寄らなければ、約104km。走行可能距離が現在400km弱のタイカンにとって、甲府からの往復は何の問題もないはずだが、所用を考えるとあらかじめ充電しておきたかった。
甲府から奈良井までは、どこにも立ち寄らなければ、約104km。走行可能距離が現在400km弱のタイカンにとって、甲府からの往復は何の問題もないはずだが、所用を考えるとあらかじめ充電しておきたかった。

最近、各地にできる新しい旅館・ホテルのなかで注目すべきは、古い民家や寺社などを、外観はそのままにしてリニューアルし、快適な施設を作るという流れである。その典型的な例が、長野県の木曽谷の宿場町、奈良井宿に昨年完成したBYAKU Naraiで、古い景観を維持する宿場町にあるため、外観は全く手を付けず、一歩中に入ればセンスの良い別世界が広がるという、最近のコンセプト通りの宿であった。

実際に、泊まってみると、元のサイズをどうしても変更できない部分は除いて、よく考えられていて素晴らしく、食事も、しっかりと地の物を取り入れて、味も上品であった。

さて、甲府から奈良井までは、どこにも立ち寄らなければ、約104kmである。東京都内からなら200-230km程度であろう。走行可能距離が現在400km弱のタイカンにとって、甲府からの往復は何の問題もないはずだが、帰りの日に仕事を済ませた後、甲府から川崎まで戻らなればならないので、できれば、到着時に充電しておきたかったのである。

宿に電話すると、駐車場には充電設備は無いが、宿場の直ぐそばの道の駅に急速充電があるということであった。

実際に、奈良井宿に到着した時のオドメーターの数値は、9091km、56%、走行残距離211kmであった。

充電が……できない

早速、いつものように充電を開始すると、間もなく、エラー表示が出て、充電は不能となってしまった。この充電器のメーカーはニチコンであった。確か、この充電器はOKなはずだが、と思ったが、改めて、e-Mobility Powerのホームページで、使用不可のリストを見ると、ハセテックは、ローソンを始めとし多くの場所に設置されていて、殆ど使用不能だが、ニチコンは、大黒PAのみが不可の記載であった。

コールセンターに電話をしてみたが、この道の駅には充電器の管理者がおらず、鍵もないので初期化もできず、残念ながら諦めることにした。

グーグルなどでも、充電器の存在は教えてくれるが、さすがにメーカーまでは記載されていないので、実に面倒である。
グーグルなどでも、充電器の存在は教えてくれるが、さすがにメーカーまでは記載されていないので、実に面倒である。

現状では、輸入車の多くが、この2メーカーの充電器の充電ができないという。車種は、メルセデス、BMW、ポルシェ、ジャガーボルボなどで、現状では、高速道路の充電器以外はメーカーを確認しないと充電の予定に組み込めない、という事のようだ。

グーグルなどでも、充電器の存在は教えてくれるが、さすがにメーカーまでは記載されていないので、実に面倒である。この辺が、現在のEVの大きな問題点なのだろう。この両メーカーには至急の対策をお願いしたい。

結局、充電なしで甲府に戻り、その時のオドメーターの距離は、9208km、25%、走行可能距離残134kmであった。甲府で、仕事中に8kWhの普通充電器で5時間ほど充電し、万が一、クルマ側のエラーだとまずいので、帰路の石川PAで40kWhの急速充電を行ってみたが、全く問題なく充電でき、ホッとした。

356ホリディと今回の旅で、期せずして国内のEV充電問題の一端を実際に体験することができた。現状では、まだまだ、黎明期で試行錯誤の時期なのだろうが、これから、EVが急増することは間違いなく、早急な整備をお願いしたいものである。

11月12日現在、納車から8か月が過ぎ、この間、タイカンはノートラブルで9786kmを走った。走行可能距離は、最大419kmから、385km程度まで下がっている。

これは、恐らく、気温がさがり、エアコンの稼働が増えているからだと推測している。タイカンの数少ない欠点の1つは、あまり、暖房の効きがよくないことだ。これだけは、もう一段、強力にしてもらいたいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長、2024年8月より総編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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