内燃エンジン・ゼロへの第1歩 アルファ・ロメオ・トナーレ PHEV Q4へ試乗 高品質の内装は◎

公開 : 2022.12.11 08:25

いよいよアルファにもPHEVの時代が到来。1.3Lエンジン+駆動用モーターのQ4を、英国編集部が評価しました。

179psの1.3Lエンジン+22psの駆動用モーター

ゼロからゼロへ、というスローガンを掲げるアルファ・ロメオ。2022年、ブランドがラインナップするゼロエミッションのバッテリーEV(BEV)はゼロだが、2027年には内燃エンジンモデルの販売をゼロにするという計画を、ちょっと自虐的に表現したものだ。

そのプロセスの第1歩となるのが、今回試乗したアルファ・ロメオ・トナーレのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)。短い距離ながら、駆動用モーターだけでの走行も可能としている。

アルファ・ロメオ・トナーレ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナーレ(英国仕様)

ハイブリッドの構成は、179psを発揮する1.3L 4気筒ターボエンジンと6速ATがフロントに搭載され、122psの駆動用モーターがリアに搭載されるというもの。駆動用バッテリーの容量は15.5kWhあり、最長69kmを内燃エンジンに頼らず走行できる。

その結果達成した燃費は、カタログ値で91.0km/Lと印象的なもの。CO2の排出量は26g/kmに留めている。英国では一般的な、会社からの貸与車両としても選ばれる能力を獲得した。

このハイブリッド・システムには、約50km/hを保って下り坂を惰性走行できる、ダウンヒルコースト機能も用意されている。これを利用すると、回生ブレーキが掛かり駆動用バッテリーを効果的に充電できる。

内燃エンジン車の走行が規制される都市部のゼロエミッション・ゾーンに備えて、駆動用バッテリーの残量を温存させることも可能だ。ただしPHEV化に伴い、車重は1835kgに増加した。ちなみに、マイルド・ハイブリッドの1.5ヴェローチェは1525kgある。

ステアリングはクイック 制限を加える車重

アルファ・ロメオはPHEVのトナーレを、このクロスオーバー・クラスで最もスポーティなモデルだと主張する。確かにフロントノーズの反応は鋭く、クイックなレシオが与えられたダイレクト感のあるステアリングで軽快感はある。

しかし、スポーティかと聞かれると回答には悩む。運転していると、常に重さを意識させられるためだ。全体的な走行時の質感は、基本的にこれまで試乗したトナーレと大きな違いもない。

アルファ・ロメオ・トナーレ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナーレ(英国仕様)

全長は4530mmと長くはないものの、動的能力を質量が制限している。アルファ・ロメオがDNAと呼ぶドライブモードでダイナミック・モードを選択しても、連続するコーナーをリズムカルに抜けていくことが得意とはいえない。操縦性は、期待ほど冴えない。

増えた車重によりリア・サスペンションへ改良を受けているが、ドライブトレインにプラスの影響はない。システム総合で最高出力が280psもあることを実感しにくい。

フロントのターボエンジンと、リアの駆動用モーターとの間に機械的なつながりはなく、右足の入力に対して常に制御ソフトウエアの思考時間が挟まる様子。エンジンが低回転域にある場面でのトルク不足も、上手くカバーできていない。

乗り心地は、市街地の速度域では小さな揺れが少々目立つ。だが、速度域の上昇とともに改善され、高速道路では滑らかな質感に落ち着く。PHEVは都市部での走りを得意とするパワートレインといえるが、走行時の印象は高速道路がベストなようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事