ザガートの斬新デザイン ランチア・フルビア・スポルト アルファ・ロメオ・ジュニア Z 後編

公開 : 2022.12.25 07:06

1960年代に生まれた大胆なコーチビルド・ボディの上級クーペ。少量生産の貴重な2台を、英国編集部がご紹介します。

見た目の美しさが購入の決め手

2022年に今回の2台を並べると、先行したランチアフルビア・スポルトが、アルファ・ロメオ・ジュニア Zのスタイリングに少なからず影響を与えていることが観察できる。特に緩やかに弧を描くルーフラインは、一致するように見える。

フルビア・スポルトのフロントノーズはずんぐりしており、リアは鋭角でスピード感がある。ジュニア Zの場合は逆転し、フロントノーズが鋭角で、リアはカムテール状に短い。

シルバーのランチア・フルビア・スポルトと、レッドのアルファ・ロメオ・ジュニア・ザガート
シルバーのランチア・フルビア・スポルトと、レッドのアルファ・ロメオ・ジュニア・ザガート

ボディサイドは、フルビア・スポルトでは控えめにフロントフェンダーが広げられ、リア側は上部がフラット。清楚で、視覚的に幅が狭く感じられる。一方のジュニア Zはボンネットもフェンダーラインも筋肉質に膨らんでいる。スポーティな雰囲気が強い。

フロントエンドは両車ともに強い個性を放つが、ジュニア Zはディティールまで気が配られている。ヘッドライトはプレキシガラスで覆われ、それを仕切るようにアルファ・ロメオの盾形グリルが切られている。左側には通気用のスリットが並ぶ。

フロントワイパーを隠すように、ボンネット後端が立ち上がっている。フロントバンパーのカタチも凝っている。オーナーのチャールズ・クック氏は、見た目の美しさが購入の決め手だったと話すが、納得できる理由だ。

滑らかなボディのおかげで空力特性には優れ、アルファ・ロメオ・スパイダージュリアより僅かに走行性能は優れていた。とはいえ差は小さく、当時からスタイリングを買うようなモデルといえた。

インテリアはランチアの方がワンランク上

他方、ティム・ヒース氏はフルビア・スポルト 1600を8年間維持してきた。「妻はスタイリングが好きだと話します。別に所有するフルビア・ラリー1.6 HFを補完する、重要な1台でもあります。メカニズムは同じなので慣れていますしね」

ヒースは地金まで露出させた本格的なレストアを、2007年に職人へ頼んでいる。ホイールアーチのインナー側とアウター側を溶接し、デイトナ風のプレキシガラス・カバーをヘットライトに被せるなど、各部へ手も加えたという。

ランチア・フルビア・スポルト(1965〜1973年/英国仕様)
ランチア・フルビア・スポルト(1965〜1973年/英国仕様)

「速くて静かで、スムーズに走ります。欧州大陸を巡る長距離旅行では、燃費も伸びますよ」。ヒースが満足気に話す。

クックがジュニア Zのオーナーになったのは4年前。「美しいコーチビルド・ボディの限定生産モデルですが、維持や走らせるのに大金は必要ありません」。と説明する。

オリジナルは1600 ジュニア Zだったが、以前のイタリア人オーナーが1750エンジンへ載せ替えていたそうだ。「1.6Lより少しパワフルです。別に所有している、クーペのスプリント・スペチアーレとの違いは大きいですね」

クックは身長が180cm以上ある。ドライビング・ポジションには不満を持っている。

インテリアは、一見すると似た雰囲気で装備も充実している。丁寧に見比べると、フルビア・スポルト 1600の方が仕立てはワンランク上にある。

内側のドアノブは動きが滑らかで、ウッドパネルにヴェリア社のメーターがふんだんに並ぶ。サポート性に優れたスポーツシートが2脚据えられ、長距離ドライブを最後まで楽しめそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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