ロールス・ロイス、水素燃料電池を検討中 トヨタも間接的に影響か バッテリーEVから撤退も?

公開 : 2023.06.12 18:05

英国の高級車メーカー、ロールス・ロイスはEVへの移行を計画していますが、将来的に水素燃料電池を導入する可能性があります。バッテリーEVにはないメリットを挙げつつ、鍵となるインフラ整備に注目しているとのこと。

水素を使うなら燃料電池 将来のEVに採用?

英国の高級車メーカーであるロールス・ロイスは、技術が十分に成熟し、大規模な商業化が可能になった時点で、将来のEVモデルをバッテリー式から水素燃料電池パワートレインに切り替えることを検討している。

先週イタリアのヴィラ・デステで欧州デビューを果たした新型スペクターは、同社初のEVで、市販車としては最大級の120kWhバッテリーを搭載する。生産開始は9月の予定だ。

ロールス・ロイス初のEV、スペクター
ロールス・ロイス初のEV、スペクター

航続距離は480km以上とされ、195kWの急速充電に対応するという。しかし、同社CEOのトルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、ロールス・ロイスというブランドの位置づけと、一般的なオーナーの特殊な使用例から、将来的に水素を代替エネルギーとして検討する可能性があると述べている。

ミュラー・エトヴェシュ氏は、スペクターの発表会場でAUTOCARの取材に応じ、トヨタなどが開発している水素燃焼技術(水素燃焼エンジン)が、V12エンジンを搭載するロールス・ロイスの大型・重量級の高級車に適しているのではないかという質問に対して、次のように答えた。

「水素燃焼エンジンは、すでに何年も前にテストされたものですから、わたしが検討するようなものではないと思っています」

ロールス・ロイスの親会社であるBMWは、2000年代前半に7シリーズに水素燃焼技術を搭載した実績がある。

「この技術は、水素の最も効率的な利用方法ではありません。将来的に水素が使われるとしたら、それは燃料電池です。燃料電池はバッテリーと何ら変わりません。エネルギーを得る方法が違うだけです」

「わたし達にとって適切な時期が来て、技術が格段に進歩したとき、ロールス・ロイスとして間違いなく追求することになると思います。バッテリーから身を引き、燃料電池に参入するかもしれません」

BMWは現在も水素開発に取り組んでおり、トヨタのセルを使用した燃料電池プロトタイプ、iX5ハイドロジェンを少量生産する予定だ。BMWのオリバー・ツィプセCEOは、「このタイプの駆動システムの技術的成熟度を示し、将来的な可能性を強調する」意味で、同モデルの発売は象徴的であると述べた。

ミュラー・エトヴェシュ氏は、特に長距離移動に頻繁に使用されることが少ないロールス・ロイスの市販車に関して、水素燃料電池の活躍の場があるかもしれないと考えている。

同時に、1つの障壁も認めている。

「水素は一般家庭で補給できませんが、バッテリーEVの場合、家庭にも、オフィスビルにも、充電設備を設置するスペースはたくさんあるのです。大きな利点です」

「多くのお客様にとって、スペクターは初めてのEVではないので、すでに多くの方が自宅に充電器を設置しています」

このため、ロールス・ロイスは水素の実現可能性を評価するために、水素充填インフラの発展を「注視」しているという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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