英イネオス、水素燃料電池車(FCEV)に注力 今夏デモ機公開へ ヒョンデの技術導入

公開 : 2023.05.12 18:45  更新 : 2023.07.12 17:43

英国のイネオス・オートモーティブは、水素燃料電池を搭載したSUVのプロトタイプを7月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで展示すると発表しました。グリーン水素への投資にも力を入れています。

水素技術に注力 プロトタイプ今夏登場

英国の自動車メーカー、イネオス・オートモーティブは7月に開幕するグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、水素燃料電池を搭載したグレナディアを展示すると発表した。

5月9日から11日にかけてロンドンで開催されたフィナンシャル・タイムズ紙のイベント「Future of the Car」で、イネオス・オートモーティブのリン・カルダーCEOは次のように述べた。

水素燃料電池を搭載したイネオス・グレナディアのプロトタイプ
水素燃料電池を搭載したイネオス・グレナディアのプロトタイプ    イネオス

「この技術の可能性を証明するために、当社は水素燃料電池のデモ機を製作し、夏のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで発表する予定です」

「イネオスは、年間40万トンの水素を生産し、グリーン水素の開発に欧州中で大規模な投資を行っています。わたし達は、水素が将来のパワートレインの一部であると確信しています」

「そして、低炭素燃料や代替燃料を使用する欧州であろうと、(バッテリーEVの)選択肢やインフラを持たない世界の隅々であろうと、内燃エンジンは存続すると思います」

イネオスは、2021年後半に英国のエンジニアリング会社AVLと水素燃料電池車の開発で提携し、昨年、オンロードとオフロードで走行テストを実施した。パワートレインには、ヒョンデの技術を使用している。

ヒョンデは水素燃料電池車に力を入れており、一部の市場でネッソを販売している。昨年は62.4kWhのバッテリーと95kWの燃料電池、合計出力680psのモーターを搭載する「Nビジョン74コンセプト」を披露した。

リン・カルダーCEOは、交通・輸送における二酸化炭素排出量を削減するためには、「技術の選択肢が広ければ広いほど、より良い結果が得られる」と述べた。

また、既存のパワートレインを廃止するのではなく、水素燃料供給ネットワークやその他の新技術に投資するよう、政策立案者に呼びかけた。

「わたしが目にしているのは、大きな決定、大きな宣言、禁止であり、インセンティブを与えるのではなく、業界をある方向へ押しやることです」

「インセンティブを与える方が、ずっと良い方法だと思います。もし、政府がEVを奨励したいと言えば、流通ネットワークにお金を使うでしょう」

「燃料電池を奨励しようとすれば、グリーン水素の製造や流通網にお金を使うか、インセンティブを与えるでしょう」

「希望を口にするばかりでは、実現には至りません。必要なのは、グリーン水素であれ、低炭素燃料であれ、クリーンエネルギーの生産者と流通網、そしてその技術を市場に投入する理解ある人々だと思います」

「当社は、この3つのうち2つを手に入れたと考えています。生産と技術的なノウハウです。最近、グレナディアの水素燃料電池のデモ機を作ったのはご存じでしょう。しかし、流通網がありません。そこにインセンティブが必要なのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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