驚愕体験を平然と生む ピニンファリーナ・バッティスタへ試乗 1903psで357km/h以上 前編

公開 : 2023.08.27 08:25

アウトモビリ・ピニンファリーナによる、電動ハイパーカーが遂に完成。英国編集部が量産仕様をイタリア・トリノで評価しました。

最高速度357km/h以上 最高出力1903ps

ランボルギーニの開発部門で、今は亡き伝説的技術者、ボブ・ウォレス氏の後輩としてキャリアをスタートし、ブガッティEB110などのスーパーカーを生み出したロリス・ビコッキ氏。彼が、今日は筆者の隣りに座っている。

ロリスが、この電動ハイパーカーへ関わったのは、開発の終りが見えた頃。オーナーが、より親しみやすいと感じる特性を与えるためだったという。

ピニンファリーナ・バッティスタ(欧州仕様)
ピニンファリーナ・バッティスタ(欧州仕様)

ブガッティ・シロンを凌駕する加速力を繰り出し、最高速度は357km/h以上がうたわれている。最新のバッテリーEVらしく、アップル・カープレイにも対応している。

トラクション・コントロールをスポーツ・モードにし、スロットル特性をフュリオサ・モードへ切り替えたら、どうなるか彼へ聞いてみる。朗らかなイタリア人は、少し困惑したような笑みを浮かべながら、「どうなるでしょうね」。と答える。

筆者は、イタリア北西に位置するトリノへやって来た。最高出力1903psを誇る、アウトモビリ・ピニンファリーナ・バッティスタの真実を確かめるために。

いつものことだが、過去の経験を大きく超えるモノへ挑むとき、期待だけでなく不安も入り交じる。恐らく、最高出力の25%程度を引き出しただけでも、イタリアの公道では手に余るだろう。路肩には、幹の太いヘーゼルナッツの街路樹が並んでいる。

一般的なトラクション制御では手に負えない

ポルシェ918 スパイダーマクラーレンP1が話題を集めていた頃、ル・マン24時間レースで活躍したレーシングドライバー、リチャード・アトウッド氏と話す機会があった。彼は、素晴らしいマシンがガレージへ仕舞い込まれることを心配していた。

1000馬力という数字だけでなく、ハイブリッド・パワートレインの瞬間的な大トルクを、一般的なドライバーの運転ではリアタイヤが受け止めきれないと考えたためだ。だがバッティスタには、遥かに強力な駆動用モーターが4基も載っている。ゾクゾクする。

技術者のロリス・ビコッキ氏(右)と筆者(左)
技術者のロリス・ビコッキ氏(右)と筆者(左)

一方で、アウトモビリ・ピニンファリーナ社の最高技術責任者(CTO)、アンドレア・クレスピ氏との会話も蘇る。2018年にお会いした時、バッティスタの安定した動力性能について誇らしげに説明していた。

1台のプロトタイプで、0-100km/h加速を80回も繰り返し、平均タイムの差は0.1秒に収まっていたそうだ。また、一般的なスーパーカーに実装されるトラクション・コントロールでは、まったく手に負えなかった可能性にも触れていた。

瞬間的に240.2kg-mものトルクを発生するパワートレインに、内燃エンジンと同じシステムが通用するとは思えない。そこで、10ミリ秒単位で制御される独自システムを開発したという。少し、不安の慰めになる事実ではある。

筆者とロリスを乗せたバッティスタが、トリノ郊外のストレートを進む。勇気を出して、フュリオサ・モードを試してみる。アクセルペダルを、フロア側へ目一杯倒す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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