819psの素晴らしい処女作 ルーシッド・エアでニューヨークを走る 衝撃的な速さ 前編

公開 : 2023.06.03 09:45

北米の新興自動車メーカー、ルーシッドが提供を開始した上級サルーンのエア。ニューヨークのドライブで、英国編集部が実力を探りました。

モデルSの開発を率いた技術者がCEO

ニューヨーク・マンハッタン。道を挟むように、高層ビルが垂直に立ち並ぶ。ルーシッド・エアの運転席なら、少し上を仰ぎ見るだけで、ワンワールド・トレードビルが尖る様子を眺められる。フロントガラスが頭上まで伸びているから。

新興自動車メーカーのルーシッドは、これまでとは異なるクルマ作りを成し遂げようとしている。目指すところは、テスラより遥かに上のプレミアム・ブランド。ベントレーメルセデス・ベンツアウディのライバルだという。

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)
ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)

同社として初となる量産モデルが、電動サルーンのエアだ。AUTOCARでは2022年に生産初期の段階で1度試乗しているが、いよいよ工場はフル稼働状態に入ったらしい。昨年だけで7000台が、アリゾナ州の工場を旅立ったそうだ。

2023年には、1万2000台の生産が計画されている。今回ニューヨークで筆者が試乗した1台も、それに含まれる。

ルーシッド・グループは、電気自動車用バッテリーとモーターの製造メーカーとして、2007年にスタート。ジャガーロータスで技術者を務め、テスラではモデルSの開発を率いたピーター・ローリンソン氏が加わり、自動車メーカーとしての歩みを始めた。

ローリンソンは2019年からルーシッド・モータースのCEOへ就任し、エアが完成するまでを見届けた。バッテリーEV(BEV)開発に対する難しさも、良く理解されている人物だといえる。

ワイド&ローで他に例がない素材感

2022年にエアを試乗した時は、斬新なスタイリングやインテリアに見とれ、圧倒的な動力性能に驚いた。優れたBEVに仕上がるであろうことは予想できた。

ソフトウエアにはバグが残り、シャシー特性は充分に煮詰められていなかった。製造品質の改善もこれからといえたが、新しい自動車メーカーが新しい工場で開発し、本格的な量産前だったことを考えれば、理解できる水準ではあった。

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)
ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)

今回、マンハッタンで目の当たりにするエアは、以前より遥かに丁寧に作られている。ポルシェフェラーリが珍しくない街ながら、注目度はかなり高い。

実際、存在感は他に例がないといっていい。写真では大きく見えると思うが、全長4976mm、全幅1939mm、全高1410mmと、長さはBMW 5シリーズとほぼ同じ。派手なデザイン的処理はないものの、ワイド&ローで、SF映画の乗り物のように見える。

ニューヨーカーらしく感想を述べるなら、クール。衝撃を与えるほどではないにしろ、滑らかなフォルムが通行人を振り返させる。すぐには古びることもないだろう。

エアの土台をなすのは、アルミニウム製でスケートボード構造を持つ、ルーシッドが開発したBEV用アーキテクチャ。乗員空間を最大化するため、パワートレインの仕様やレイアウトは考え抜かれている。

駆動用モーターは前後に1基づつ載るが、トランスミッションとデフ、インバーターがモーターと一体になっていることが特徴。システム総合での最高出力は、試乗車のエア・グランドツーリングで819ps。最大トルクは122.1kg-mもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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