【これぞ妙味】ジャガーFタイプV6モデル「P380」 試乗でわかった「バランス感」

公開 : 2021.02.26 19:50

見えないところに神の宿るディテール

Fタイプの乗降性は、ドアが長く厚みもある分、狭い場所では決して簡単ではないが、サイドシルの低さと跨ぎやすさは、スポーツカーとしては礼儀正しいぐらいの親切さといえる。

ただし、いざ腰を下ろす段になると、お尻とシート座面の接点がけっこう深いことに気づかされ、乗り手にも猫科じみた体幹を求めてくるところはある。

それさえ乗り越えれば、地を這うように低い着座位置から、往年のイタリアン・スタイルほどではないが、今どき珍しく両腕と両足を伸び気味に構えさせるステアリングとペダルに対峙する。

高めで幅広なセンターコンソールといい、古典的といえるドライビングポジションに、スポーツカー好きならほくそ笑むであろう、身体感覚だ。

目に見える部分も、スポーツカーの定石に巧みに則っている。

3連メーターはエアコンの3連ダイヤルにとって代わられても、12.3インチのインタラクティブドライバーディスプレイもメニュー画面が3分割フラグメントなので、アナログからデジタルへ、美観と機能性の正常進化といえる。

その上の、作動時にせり出してくるエアコン吹き出し口を格納するカバーには、「JAGUAR EST.1935」というレタリングが施される。これはマイチェン後に加わったディテールだ。

よく見ると3本スポークが下寄りにオフセットされたステアリングは異形ながら、メーターパネルの視認性を確保している。

「鬼面、人を衒う」ような趣は皆無だが、シンプルかつ現代のジャガー・スポーツとして洗練されたロジックに貫かれたコクピットといえる。

通常、凡百のメーカーなら「無いより在った方がマシ=お金がとれる」とばかり、ディテールは箇条書き的にアドオンされがち。見えない部分に主張が宿る造りは、Eタイプの後継としての矜持と美学に価値を感じられるドライバーにこそ、向けられているといっていい。

とどのつまり、腕ではなくセンスや美学で乗り手を選ぶところが、Fタイプのコクピットにはある。

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