9a COPPA DI TOKYO

2016.11.23

text:Gumi Ogata (小方具美) photo:Junichi Okumura (奥村純一) / COPPA DI TOKYO

 
11月23日に開催されるのが恒例となったコッパ ディ 東京も今年で9回目となり、すっかり人気も定着したようで100台を超える参加車両が会場となる汐留イタリア街に集まった。予定どおり10時には1号車がスタートしたが、その直前に今話題のアバルト124スパイダーとその原型となったフィアット124アバルト・ラリーの2台が先導車としてスタートして注目された。まさにこのイベントにこそふさわしい先導車であるだろう。

もともとコッパ ディ東京は、イタリア風の町並みが日本では他にないイタリア街をメイン会場としているためか、イタリアの小粋なベルリネッタやバルケッタがよく似合うヒストリックカー・ラリーである。しかし、ここにきて、イタリア車に加えて、多様で多彩なクルマたちが集まる祭典になってきたようだ。この日ばかりは、イタリア街の中心の広場に色とりどり、いずれも個性豊かなクルマたちが集まり、まるで魔法がかかったようにエキゾチックな空間となっていた。

毎年ルートは変わるが、しかし今戸神社や晴海埠頭のように、これまでも何度か立ち寄ってきた場所は健在だ。もともと、江戸/東京は千年をはるかに超える歴史があり、江戸氏やそれを引き継いだ太田道灌が現在の皇居/江戸城を根城とするより以前から、隅田川沿いの浅草や今戸は港町として栄えていた。また東京の東側の中世以前からの歴史のある土地や、江戸時代から昭和にかけて、元は海であったのが埋め立てられて陸地となった土地などを、今回も走った。

晴海はそもそもが幻となった1940年の東京オリンピックの舞台となる場所だったが、今はまた2020年のオリンピックのために整備が進められている。そんな常に変貌を続ける江戸/東京を駆け抜けるヒストリックカー・ラリーであるコッパ ディ 東京は、まさしく万華鏡のように色鮮やかなイベントで、参加者ばかりか、見学者の心をも高揚させてくれたようで、笑顔がつきなかった。

  • 1929 ALFA ROMEO 6C 1750 SS/ヴィットリオ・ヤーノの設計によるヴィンテージ期を代表するアルファロメオ。6気筒で1500ccから発展した。SSはDOHCのエンジンを持ち、レースでも活躍。

  • 1936 FIAT 508S Ballila/グランプリ・レースで技術的に最高水準に到達したフィアットが生み出した小型スポーツカーの名作。戦後の発展型1100Sに至るまでクラス最高の性能を誇った。

  • 1929 AUSTIN 7 Spl/英国人は1922年に登場した大衆車オースチン7の中古車をベースに各々が改造してレーシングカーを作った。ロータスもローラもその第1号車は7の改造車だった。

  • 1946 LANCIA Ardea/’30年代のランチアの革新的な小型車がアプリリアであり、アルデアはその妹分たる縮小版で903ccV4エンジンを搭載し、1939年から1951年まで生産された。

  • 1951 ASTON MARTIN DB2/W・O・ベントレー設計のDOHCエンジンを搭載した戦後型アストンマーチンDB2は1949年のル・マンに登場し、翌年から生産された。1953年に4座席のDB2/4となった。

  • 1959 AUSTIN HEALEY Sprite Mk-1/優れたレーサーであり技術者であったドナルド・ヒーリーがオースチンと手を結んでA30/35のパーツを多用して開発した2台目が1958年に登場したスプライト。

  • 1952 STANGUELLINI 750S/フィアット創業時からモデナの代理店のスタンゲリーニ。最初はフィアットがベースだったが、やがて独自のシャーシーとDOHCエンジンを開発してレースで活躍した。

  • 1965 FIAT ABARTH OT850/アバルトはフィアット600をベースにして多種多様なモデルを開発して、レースで大活躍をした。フィアットが1964年に新型850を発表すると、すぐにこのOTが開発された。

  • 1967 FIAT 850 Berlina + 1962 FIAT 600D/フィアットは500に加え600や850も参加していたが、その愛嬌のある佇まいから見学者の人気も高かった。’60年代のフィアットの代表的モデルだ。

  • 1959 FIAT ABARTH Record Monza/このアバルトのベルリネッタは、フィアット600のシャーシーにザガートのボディを架装したもの。モンツァでスピード記録を樹立したビアルベーロ・エンジンを搭載したのが名前の由来。

  • 1959 FIAT ABARTH 750GT Zagato/750GTの初期モデルは丸い普通のカタチのルーフだったが、1956年の終わりにダブル・バブルのルーフとなる。このクルマの代名詞ともなり、後にはザガートの個性を表す造形として踏襲された。

  • 1952 SIATA 300BC/トリノのシアタはフィアットの開発部門と密接な関係を持ちつつ、独自のスポーツカーやフィアット用の改造パーツを製造した。この300BCはベルトーネのデザインによるバルケッタ。

  • 1964 RENE BONNET Djet/パナールの実質的なワークス・チームとしてル・マンなどで活躍してきたDB。そのDBが分離してルノーと組んだのがルネ・ボネ。このジェットは世界初のミッドシップ市販車でもある。日本初上陸。

  • 1965 MATRA BONNET Djet/ルネ・ボネはマートラに吸収される。マートラ・ジェットはテールを延長しトランクルームを広くするなど実用的な改良を加え生産を拡大し、ラリーではワークス・チームが活躍した。

  • 1964 RENAULT Dauphine GORDINI + 1967 CITROEN DS19/パリの運河にかかる橋と言っても通用しそうな光景。神田川河口の柳橋を渡るのはドーフィン・ゴルディーニとシトロエンDS19。ともにラリーでも大活躍した性能を潜ませる。

  • 1960 MESSER SCHMIT KR200/銀座4丁目を駆け抜けるメッサーシュミットKR200。バブルカーこそ21世紀の都心にふさわしい乗り物かもしれない。

  • 1961 ISETTA Brighton + 1960 MESSER SCHMIT KR200/これは英国製で、元祖イタリアや本家ドイツの4輪のイセッタとは違って3輪である。

  • 1963 HEINKEL TROJAN/メッサーシュミットとイセッタを足して2で割ったような成り立ちの、ハインケル・トロジャンが行く。

  • 1953 MG TD/一見すると戦前のMGのように見えるが、れっきとしたTD。カフェ・レーサー的改造が施されて、いい雰囲気に仕上がっている。

  • 1950 MORGAN 4/4/不易を尊ぶ英国紳士の矜持を持ち続けたモーガン初の4輪車である4/4は、21世紀まで生き延びて真の古典となった。

  • 1954 TRIUMPH TR2/銀杏が色づく今戸神社にTR2のエンジ色が調和する。秋こそ英国車の季節であり、英国風にダンディに装いたい。

  • 1969 MAZDA Cosmo Sport/ル・マンという頂上まで登りきったロータリー・エンジンの日本での第1歩はコスモから。それは長い道程だった。

  • 1967 TOYOTA Sport 800/まだ欧州車の後塵を拝するばかりだった日本車のなかでヨタハチの設計思想は斬新で、世界に通用するものだった。

  • 1964 HONDA S500/当時いきなりF1に挑戦したホンダのDOHC4気筒のS500は、よく手に馴染んだ小型拳銃のような威力を秘めていた。

  • 1965 MASERATI Mistral Spider/優雅で豪奢なマセラティ・ミストラルは、21世紀の同社のイメージにも通じる。

  • 1963 LANCIA Fulvia 2C/目立たないことが最高のおしゃれ、であることを教えてくれるのがランチアのベルリーナだ。

  • 1975 CITROEN SM/シトロエンの’70年代の到達地点は、’30年代のフランス高級車のデカダンスを忍ばせる。

  • 1954 PORSCHE356 Pre-A/1964年の第1回日本グランプリにおける活躍から、日本におけるポルシェの伝説は始まった。この個体はプライベーターによる日本GP出場車そのもの。

  • 1958 PORSCHE356 A/ポルシェは次のモデルが最良と自ら宣言する。しかし、実際に趣味的に見てゆくと各年代のモデルそれぞれが固有の素晴らしさを持ち、単純に新しければ良いとは言い難い。

  • 1964 PORSCHE 356 SC + 1962 PORSCHE 356B1600 Super/フラット・フォーの小森さんが永らく愛でる356と、吉田 匠さん念願の愛車となった1600スーパーが上野寛永寺付近でランデブー走行。

  • ロータス 11/ル・マンでも活躍した究極のフロント・エンジンのスポーツカー11は、乗用車とは対極的にスパルタンなレーシング・マシンだ。が、いつも親子で参加している。

  • 1970 PORSCHE 911T/911Tを見かけだけでなく、エンジンも足回りもチューンナップ。ちょっと手を入れるだけで戦闘力のあるレーシングカーに変身するのがポルシェの素質。

  • 1970 PORSCHE 911T + 1954 AUSTIN HEALEY 100 BN1/911は本物のクラシックとして完成された存在。ヒーレーが開発した100はEタイプの好敵手だが、ハンドリングに勝るかも。

  • 1947 FIAT 500B ZAGATO Panoramica/カロッツェリア・ザガートによるトポリーノは、空前絶後の球面体ベルリネッタ。

  • 1953 MORETTI 750 Alger-Le Cap/アフリカのラリーで活躍したモレッティが、急遽空輸されてイタリア街に登場。

  • 1970 FIAT ABARTH 1000TCR/フィアット600をベースにしたアバルト究極のハコたるTCRから元の600は想像しがたい。

  • 1964 ALFA ROMEO Giulia Spider Veroce + 1975 FERRARI 365GT4 BB/同じピニンファリーナだが十数年の隔たりがある2台がすれ違うイタリア街の昼下がり。

  • 1970 DINO 246gt/ディーノは1969年の206から1973年の246まで6台の参加があり、いずれも絶好調で美しいコンディションを誇示していた。

  • 1961 ALFA ROMEO Giulietta SZ/ジュリエッタ・ベースのザガートはSVZと2台のSZが参加。多種多様なクルマが集結したことは、この写真からも一目瞭然。

  • 総合優勝は伊香保の横田さん。賞品としてゼニスのリストウォッチが贈られた。

  • バルケッタ・クラス2位であり、チーム賞も獲得した堺 正章さん。

  • 親子でご参加の東儀秀樹さんも’60年以前のクラスで2位を獲得。

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