孤高のF1実況者と一緒にF1を観ると?

公開 : 2018.01.20 11:40

マレー・ウォーカーは、「エネルギッシュで愉快」なスタイルのF1実況は世界の視聴者に愛される孤高の存在です。では彼と彼の部屋でレースを観戦したらどうなるでしょう? じつに深く、あたたかいものとなりました。

もくじ

あのひととF1を
誠実さの問題
今のフェラーリ
当時を振り返る
F1界で最も好きな人物は
番外編:父子鷹

解説者とF1を観戦する

10月の最終週、ルイス・ハミルトンがサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われたUSグランプリで勝利をおさめた。残り3レースを残して、今シーズンのF1チャンピオンの座はハミルトンとメルセデスでほぼ決まっている。

われわれAUTOCARの編集オフィスでは、残りのレース、特に最終戦のアブダビGPを盛り上げるには何が必要かを議論しているところだ。この原稿が公開される頃には結果が明らかになっていることだろう。

もちろん、編集部の中にもF1を見るくらいなら他の暇つぶしをした方がマシだと考えるものもいるが、そうでない人間もいる。誰ともなく「最終戦を楽しむ唯一の方法は、絶対に楽しませてくれる誰か、例えばマレー・ウォーカーみたいな人物と一緒にレースを観ることじゃないかな……」と言い出した。

素晴らしいアイデアだ。

このベテラン・コメンテーターは10年以上前にフルタイムのテレビ中継からは引退したかもしれないが、94歳にしてなお彼はセミリタイアの状態(単にわたしの思い込みかもしれないが)にあり、F1界で非常に敬愛されている人物でもある。多くのひとびとにとって、マレーの名は英語圏における最高のF1ファンを意味しているのだ。

マレーに連絡すると(ありがたいことに、以前会った際に彼自身がAUTOCAR読者であることを明かしてくれていた)、ニューフォレストとの境界にある森に囲まれた彼の自宅で、テレビのチャンネル4でF1観戦するには最適なレース当日の正午に、フォトグラファーのスタン・パピアーとわたしを迎えてくれることが直ぐに決まった。

マレーはまるで30歳の人間が用意した様なとても明解な説明をしてくれる。彼とやり取りをしていると、彼の生まれ持っての才能を思い出さずにはいられない。つまり、他人に気を遣わせないのだ。

「視聴者が思っているほど、レース中に興奮したり、中継画面に頼り切っているわけではないんだよ」と彼は教えてくれた。「できればただ静かに座って実況したいと思ってるんだが、『われわれの』レース中に喋ってはいけない理由なんかないからね……」

かつて彼が言っていたことを思いだした。

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