【姿も質も出色の純EV】フィアット500エレクトリックに試乗 航続距離320km 後編

公開 : 2020.12.16 15:25

今も堅調な人気を誇るイタリアン・コンパクト、フィアット500。次世代はひと回り大きく、少し豪華な純EVとして再発明されました。優れたデザインや上質さ、320kmという航続距離など、出色の仕上がりだと英国編集部は評価します。

広々とした空間とモダンなインテリア

text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
さて、純EVへ生まれ変わった新しいフィアット500エレクトリックを運転してみよう。

500が大きくなったといっても、違和感を覚えるほどではない。ドアは大きいものの、形状はフィアット500。全長はフォードフィエスタや新しいルノー・クリオ(ルーテシア)より、断然短い。

フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)
フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)

やや着座位置の高い運転席に座ってみると、広々とした印象を受ける。足元周りの空間も、エンジン版フィアット500より余裕がある。

後ろを振り返ってリアシートを見れば、全長が3.7mを切るコンパクトカーだと実感する。大人2人が後ろに座ったら、かなり窮屈だと思う。

インテリアの素材感はとても上質。ドライバー正面のメーターは、オリジナルの形状に似せた1丸風のバイザーに覆われているが、モニター式。整ったグラフィックで、見やすい。当然だが、同心円で回転するタコメーターは、もう付いていない。

ダッシュボード上部を専有しているのが、ワイドモニター。現代的な雰囲気にまとまっている。

実際に押せるエアコン用のスイッチがモニターの下に並び、扱いやすい。小物入れを挟んで、さらにその下にP、R、N、Dのボタンが並ぶ。とても好感の持てるインテリアデザインだ。

シートも好印象。スポーティとはいえないものの、シートとステアリングホイールとの位置関係も、従来より一般的なものになった。チルト(上下)に加え、テレスコピック(前後)方向の調整もできる。

多くの電気自動車と同様に、500エレクトリックも豊かなトルクと滑らかさで発進する。アクセルペダルのレスポンスは鋭い。

洗練されたクルマだと感じる走り

加速とともに高音域で鳴くようなノイズが聞こえてくるが、音質は洗練されている印象。発進から60km/hくらいまでの加速は力強く、0-100km/h加速を9.0秒でこなすことは間違いなさそうだ。

ドライブ・モードは3種類。従来的な運転感覚が得られるノーマル・モードと、力強い回生ブレーキになるレンジ、エネルギーをできるだけ温存してくれるシェルパがある。

フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)
フィアット500エレクトリック・ラ・プリマ(欧州仕様)

このシェルパ・モードでは、例えば航続距離が250km程度残っている場合、可能な限りエネルギー消費を抑えることで、30kmほど走行距離を伸ばしてくれるという。いざという時に心強い。

500エレクトリックは、とても運転しやすい。レンジモードでの、少し強すぎる停止直前のブレーキング感覚を除いて。

今回は複合的な条件で128kmを走行したが、バッテリーの減り具合から判断するに、ノーマル・モードで260km、シェルパ・モードを多用すれば320km前後は走れるだろう。

ドライブトレインは大きく異るものの、エンジン版の500と似た運転感覚を備えていることにも驚いた。ステアリングホイールの操舵感は正確で比較的軽いが、人工的な感触がある。車重増をしていながら、路面状況では跳ねるような乗り心地を示す場合もある。

とはいえ、多くの路面で乗り心地は充分に穏やか。助手席の人には、洗練されたクルマだと感じてもらえるだろう。

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